庁舎耐震化 13市町に 長崎県内自治体の取り組み進む 熊本地震5年 長崎から

県内21市町 庁舎の耐震化状況

 2016年の熊本地震で自治体庁舎が損壊したのを機に、災害時に行政機関が業務を継続できることの重要性が改めて認識された。地震から5年。長崎県21市町のうち庁舎の耐震化を済ませたのは11市町から13市町に増え、それ以外の自治体も建て替え計画に着手するなど耐震化に向けた取り組みが進んでいる。
 熊本地震では熊本県宇土市役所が損壊し、機能不全に陥った。本県では当時、11市町で庁舎の耐震化が済んでいたものの、改修や移転について「未定」とする自治体は8市町を数えた。
 5年たった現在はどうか。県などによると、庁舎の耐震化が済んでいるのは13市町。現行の耐震基準となった1981年6月以降に建てたのは島原、諫早、五島、雲仙、南島原、長与、時津、小値賀の8市町。島原市は昨年、新庁舎に建て替えた。現行基準以前に建てたがその後、耐震改修を済ませたのは佐世保、平戸、壱岐、西海、新上五島の5市町となった。
 耐震化が済んでいない8市町は長崎、大村、松浦、対馬、東彼杵、川棚、波佐見、佐々。長崎市と川棚町は新庁舎の建設を進めている。川棚町の担当者は「熊本地震以前から検討していたが、地震を機に準備が進んだ」と明かす。
 ほかの市町も建て替えや耐震改修の準備、庁舎整備基金の積み立てなどに取り組んでいる。波佐見町や佐々町は新庁舎の設計に着手。熊本地震を受け国が創設した財政措置「市町村役場機能緊急保全事業」を活用するには、昨年度中に実施設計に着手する必要があったという。
 一方、財源の確保や住民の理解も課題に挙がる。波佐見町の担当者は「切り詰めながらやっているが小さい町なので財源は厳しい。『なぜ何十億も使うのか』という町民の声もある」と語る。大村市は新庁舎の建設地を検討中。新たな財政支援制度の創設を国に要望している。小中学校の耐震化を優先した松浦市は2024~26年に市庁舎の耐震改修を計画している。
 県によると、大規模災害発生時の優先業務などを定めた業務継続計画(BCP)は既に19市町で策定を終えた。県危機管理課は「災害時に自治体が陣頭指揮を執ることができなければ住民が困ってしまう」と強調。業務継続のためにも庁舎の安全性が求められるとしている。

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