福山市の観光地・鞆の浦。
鞆の浦といえば鯛料理が名物ですよね。
鞆の浦で鯛料理が楽しめる店のひとつが「季節料理 衣笠 (きぬがさ、以下 衣笠)」。
趣のある和食料理店です。
衣笠は鞆の浦周辺の瀬戸内海で取れた魚介はもちろん、各地から旬の魚介や野菜を取り寄せ、さまざまな料理を出しています。
「季節料理」の名前のとおり、四季折々の旬の食材をおいしく食べられる店なのです。
衣笠について料理や歴史を紐解き、魅力を探っていきましょう。
衣笠とは
衣笠は、福山市鞆町にある和食料理店です。
鞆の浦近海で取れた海鮮をはじめ、各地から仕入れた旬の魚介や野菜を使った季節料理が楽しめます。
さらに、鞆名物である鯛料理も自慢です。
衣笠で食べられる鯛料理には、おもに以下のものがあります。
- 鯛めし
- かぶと煮
- お造り
- 鯛茶漬け
- 鯛うずみ
時季によって、ほかの鯛料理も登場することがあります。
もちろん鯛料理以外の料理もたくさんあり、おすすめです。
衣笠にはお昼ごはん、仕事の取引先との会食、夜に食事とともに軽く一杯飲んだりするお客さんが多いです。
さらに2階には、宴会用の部屋もあります。
地元のかたが法要後の会食をしたり、企業が忘年・新年・歓送迎会で利用したりします。
また、店内ではオリジナルTシャツやトートバッグの販売もしていました。
地元のアートディレクター・右下誠(みぎした まこと)さんとコラボレーションしたもので、地元をアピールした商品です。
衣笠のメニュー
価格は消費税込。2023年(令和5年)7月現在の情報
衣笠では、定食が人気です。
福山の郷土料理・うずみなどもラインナップ。
丼物も人気です。
「天丼」「鮭いくら丼」も気になるところ。
お得な「平日限定ランチ」もあります。
平日限定ランチは、数量限定です。
なお各種定食のごはんは、プラス料金で鯛めしに変更可能。
また、数量限定の「海鮮のっけ丼」も魅力的です。
また、店内のホワイトボードには「本日のおすすめ」の一品料理がならんでいました。
一品料理の内容はその日の仕入れ状況や、時季の食材によって内容が変わります。
ちなみに、一品料理にプラス660円で定食化も可能です。
ほか、日本酒もありました。
広島の地酒を中心に、近県や東北地方の日本酒がラインナップしています。
その他のドリンクがあるほか、宴会料理なども対応可能です。
衣笠のおすすめ料理・人気の料理
たくさんある衣笠のメニューのなかから、おすすめの料理、人気の料理を紹介しましょう。
「四季定食」は天ぷらからお造りまで楽しめる地元客に人気のメニュー
「四季定食」(2,200円)は、季節料理を楽しめる衣笠を代表するメニューです。
四季定食は「天ぷら定食」の天ぷらと「お造り定食」のお造りの両方が楽しめる、とてもお得で内容盛りだくさんな定食です。
四季定食の内容は、以下のとおり。
- 季節の天ぷらの盛り合わせ
- お造りの盛り合わせ
- 炊き合わせ
- 茶碗蒸し
- 饅(ぬた)
- 漬物
- 赤だし
- ごはん
- ドリンク
旬の食材を使った天ぷらが、てんこ盛り!
これはとても食べごたえがありそうで、うれしいです。
なお時季や入荷状況で、天ぷらの内容は変わります。
取材時(2021年3月)の天ぷらは、以下の内容でした。
- ナス
- シシトウ
- サツマイモ
- ナンキン(カボチャ)
- エリンギ
- エビ 2尾
- メギス(ニギス)
- メゴチ
- アナゴ
エビは、2尾も入っていました!
太めで弾力のあるエビでしたので、2尾入っているのはお得です。
またお造りの盛り合わせも、旬の食材が盛りつけられます。
そのため時季や入荷状況で、内容は変わります。
取材時のお造りは、以下のものでした。
- 鯛
- カンパチ
- マグロ
- イカ
身が締まった鯛のコリコリ感や、脂がのったカンパチの甘みと歯ごたえがたまりません。
柔らかなマグロのうまみ、プニプニとした弾力のあるイカの淡泊な甘みもおいしいです。
取材時の赤だしには、鯛のアラが入っていました。
「鯛めし膳」は鞆名物の鯛めしが楽しめる観光客に人気のメニュー
四季定食とならんで、衣笠の人気メニューとなっているのが「鯛めし膳」(2,500円)です。
鞆名物の鯛料理の代表・鯛めしを中心に、瀬戸内の魚料理などがつきます。
鯛めし膳は、四季定食に負けず劣らずの豪華な内容です。
- お造りの盛り合わせ
- サワラのタタキ
- アジの南蛮漬け
- 炊き合わせ
- 茶碗蒸し
- ホウレンソウのお浸し
- 漬物
- 赤だし
- ごはん
- ドリンク
鯛めし以外の料理は、時季や入荷状況により変わります。
衣笠の鯛めしはグリーンピースが入っているのがアクセントとなり、印象的です。
ごはんはうっすらと茶色がかっており、ところどころにある「お焦げ」が食欲をそそります。
ほぐした鯛の身は、ホクホクとしています。
そして、うまみが広がりました。
ごはんは、ほんのりと甘辛い味付けが香ります。
衣笠の鯛めしはとてもアッサリとた味わいで、何杯でも食べられそうな飽きの来ないおいしさです。
鯛めし膳は2月に食べたのですが、冬においしい「サワラのタタキ」が付いていました。
脂がのったコリコリとした食感と、甘みのある身がおいしいです。
四季定食にもついていた「茶碗蒸し」。
トロリとした舌触りと奥深いダシの味わい。
そこにミツバの食感と独特の爽やかな香りがアクセントになります。
中には、ギンナンも入っていました。
「鯛うずみ」は福山の郷土料理と鯛を組み合わせたもの
「鯛うずみ」(1,200円)は、福山の郷土料理「うずみ」を衣笠流で楽しむメニューです。
うずみ
福山の郷土料理。ごはんの下に具をかくしたもので「うずめ身」が名前の由来。
江戸時代の福山城下で、町人のあいだで生まれた。
福山藩は倹約政治によってぜいたくな料理を禁じていたので、豪華な具材をごはんの下にかくして食べたことが発祥といわれる。
うずみには、以下のものが付いています。
- うずみ
- うずみ用の薬味(ゴマ、ネギ、海苔)
- うずみ用のダシ汁
- 小鉢
- 漬物
小鉢は時季により内容が変わります。
取材時は、アジの南蛮漬けでした。
衣笠のうずみは、上からタップリのトロロがかかっています。
中央には刻み青ジソが載り、見た目も美しい。
トロロとごはんをすくい上げると、タレが見えました。
なんと、ごはんの下には「漬け」にした鯛の身が入っていたのです。
鯛の漬けはコリコリとした歯ごたえで食感がよく、身の甘みとタレの甘辛い味わいが絡みます。
ごはんやトロロとの相性も抜群。
私は、途中からダシ汁を投入。
その後、薬味をかけて楽しみました。
ダシの風味が広がり、かける前とは違ったサッパリとした味わいです。
なお衣笠では、鯛うずみのほか「天ぷらうずみ」もあります。
「鯛のかぶと煮」は甘い味付けと見た目のインパクトで根強い人気
一定のファンがおり、根強い人気なのが「鯛のかぶと煮定食」(1,700円)です。
かぶと煮とは、鯛のエラ付近(カマ)から頭側の部分を甘辛い味付けで煮たもの。
ごはんとの相性は抜群です。
見た目のインパクトもあるので、観光客にも人気があるそう。
なお、鯛のかぶと煮は単品(1,300円)もあります。
本日のおすすめ「タコ酢味噌」は鞆で水揚げされた新鮮なタコを使用
一品料理から、店主おすすめの「タコ酢味噌」(770円:2021年取材時)。
朝に水揚げされたばかりの、鞆の浦で取れた新鮮なタコです。
タコの身は、太く厚みがあります。
そして、白くツヤがあって美しい。
タコを食べると、プリプリとした素晴らしい弾力です。
さらに、吸盤部分のコリコリッとした歯ごたえもたまりません。
そして噛みしめていくと、タコ特有の上品な甘み。
酢味噌はトロリとした舌触りで甘みと適度な酸味、カラシのほのかなピリ辛さがあります。
サッパリとしたタコと濃厚な酢味噌が、とてもマッチしておいしいです。
鞆の浦近海の魚介をはじめ、四季折々の旬の魚や野菜を使った料理が楽しめる衣笠。
運営する有限会社 衣笠商店の代表・衣笠善人(きぬがさ よしと)さんに話を聞きました。
衣笠の代表・衣笠 善人さんにインタビュー
鞆の浦近海の魚介をはじめ、四季折々の旬の魚や野菜を使った料理が楽しめる季節料理 衣笠。
運営する有限会社 衣笠商店の代表・衣笠善人(きぬがさ よしと)さんに話を聞きました。
インタビューは2021年4月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
父が平成元年に創業。祖父母は魚の卸売をしていた
──創業の経緯を教えてほしい。
衣笠(敬称略)──
当店は1989年(平成元年)に、父が創業しました。
でも実はそれより前に、ずっと祖父母が鞆で鮮魚の卸売の仕事をしていたんですよ。
地元の市場で魚介類を仕入れ、おもに店や企業などに卸していました。
ただ父は時代の変化などから飲食店に目を付け、自分で飲食店を開業する道を選んだようです。
私はそのような環境のもとで育ったので、将来の進路も自然と父と同じ道を選びました。
高校卒業後は調理師学校に進学し、そこを卒業後は大阪で和食系の飲食店に2年ほど働いて修業しています。
その後、鞆に帰郷して「衣笠」で調理の仕事を始めました。
現在、衣笠では私と父のほか、もう一人の従業員と3人で調理を担当していますよ。
なお祖父母がやっていた鮮魚の仕事は、おじを経て、現在は私の弟がおこなっています。
時季ごとの旬の食材にこだわる
──衣笠の特徴やこだわりを教えてほしい。
衣笠──
「季節料理」を掲げているように、時季ごとの旬の食材を使った料理が当店のこだわりです。
料理で四季を感じられるということですね。
鞆の浦という環境ですから、鞆や周辺地域の海で取れた魚介が多いです。
ちなみに弟の鮮魚の店からも、仕入れたりしますね。
ただ、必ずしも地元の魚介ばかりではありません。
時季ごとに旬でおいしい食材を使うため、各地から仕入れたりもしているんです。
たとえば、今の時季(取材時=3月)なら新潟沖の日本海で取れるメギスを仕入れています。
北海道からキンキを取り寄せたりもしますよ。
もちろん魚介だけでなく、野菜も時季ごとにおいしいものを全国より仕入れています。
地元のお客様からは「地元ではふだん食べられない食材が食べられる」と好評です。
かつての同級生が食べに来てくれるのがうれしい
──店をしていて、良かったことはある?
衣笠──
昔の同級生が私に会いに来て、料理を食べてくれるのがうれしいです。
飲食店のような仕事をしていないと、なかなか同級生が会いに来てくれることは少ないと思います。
だから、同級生が来てくれたときに「飲食店をしていて良かったなぁ」と、しみじみと感じますね。
あとは地元のかたによく来てもらえることです。
法事のあとの会食や、近隣の企業が利用してくださるのは、当店が地元に定着した証ではないかなと思っています。
正直、うれしいですね。
商店同士が連携して鞆を盛り上げたい
──今後の展望ややってみたいことはある?
衣笠──
鞆地区は、前に比べて宿泊施設が増えました。
その流れのなかでゲストハウスと連携し、ゲストハウスの晩ごはんを当店で提供する予定があります。
このように、鞆地区にある店で連携して地域を盛り上げたいなと思うんです。
さらには、鞆を盛り上げるようなイベントができたらいいなと。
よくa cafeの坂谷さんとも、いっしょに何かできたらおもしろいだろうという話をしたりするんです。
ときどき福山駅前でやっているマルシェイベントのようなのも、おもしろいんじゃないかと思いますね。
四季折々のおいしい食材を楽しめる衣笠の料理
鞆といえば鯛めし・かぶと煮などの鯛料理。
衣笠の鯛めしやかぶと煮などの鯛料理は、とてもおいしいです。
ただせっかく衣笠に来たのなら、鯛料理だけでなくさまざまな旬の食材を使った料理も楽しんでみてください。
四季折々のこだわりの食材をていねいに調理した料理の数々は、どれも魅力的です。
鞆の浦に来た際は、ぜひ衣笠で食事してみてはいかがでしょうか。