燕石川、20年連続勝利はお預けも打撃に見るプロ魂 “小さな巨人”の凄さを専門家分析

ヤクルト・石川雅規【写真:荒川祐史】

今季初登板は好投も黒星、虎藤浪に痛恨2ラン被弾

■阪神 2ー0 ヤクルト(16日・甲子園)

ヤクルトの石川雅規投手が16日、大卒投手として初の20年連続勝利を懸けて今季初登板・初先発し、5回5安打6奪三振2失点と好投したが、打線の援護がなく敗戦投手となった。失点は相手先発投手の藤浪に浴びた2ランのみ。あと27勝の通算200勝を見据え、身長167センチの“小さな巨人”の挑戦は続く。

ルーキーイヤーから昨季まで19年連続勝利を挙げてきた石川だが、今季開幕前の2度のオープン戦登板は3回9失点、1回2/3を7失点と炎上。開幕1軍を逃し、ファームで調整してきた。この日も1回から毎回走者を許したが、「先頭打者は打ち取る」という投球の鉄則を守り、2度の併殺などで4回まで二塁を踏ませなかった。

現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で通算21年間捕手として活躍した野球評論家、野口寿浩氏は「同じ腕の振りでストレート、シュート、スライダー、120キロ台と100キロ台の2種類のシンカーを操るのが彼の身上。オープン戦では変化球の腕の振りが緩かったのですが、修正していました」と指摘する。野口氏は現役時代には阪神、横浜の選手として石川と対戦し、ヤクルト1軍バッテリーコーチを務めた2018年に同じユニホームを着て戦った。

5回、2死一塁で藤浪を打席に迎えた石川。カウント0-1からの2球目に、一塁走者の梅野に二盗を許した。完全にモーションを盗まれ、捕手の中村は送球することもできなかった。そもそも阪神としては、失敗していれば次の回は藤浪が先頭打者となるわけで、「本来は120%成功する確率がなければ、盗塁を試みてはいけない場面。得点圏に走者を置いたことで、石川の心境に変化を及ぼしたと思う」と野口氏。阪神・矢野監督はこの時点で、藤浪を6回限りで交代させると決めていたのだろうか。石川は藤浪にカウント3-2からのストレートを左中間席へ運ばれた。

20年連続勝利はお預けとなったが、打っては3回の第1打席では四球で出塁し、5回の第2打席では二塁内野安打を放ち、ルーキーイヤーから20年連続安打となった。この部門では、DeNA・三浦大輔監督が現役時代に24年連続安打で投手としての最長記録を樹立している。野口氏は「石川はベンチから『手を出さずに三振して来い』と指示が出ない限り、常に真剣に出塁を狙って打席に入っている。そういう投手は決して多くない。セ・リーグでも1球団に1人いるかどうか。そういう姿勢がもたらした記録でしょうね」と称える。

過去11度を誇る2桁勝利も2015年が最後で、昨季は2勝8敗に終わった石川。小柄な体で途切れることなく20年間、マウンドでも打席でも全力を尽くしてきた姿は称賛に値する。200勝を目指して1年でも長く現役を続けてほしい投手だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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