阪神藤浪は「酷い時期に比べれば雲泥の差」 OB捕手が着目する“過去からの変化”

阪神・藤浪晋太郎【写真:荒川祐史】

16日の燕戦では6回途中無失点&1号2ランでチームを6連勝に導く

■阪神 2ー0 ヤクルト(16日・甲子園)

セ・リーグ首位の阪神は16日、本拠地・甲子園球場で行われたヤクルト戦に2-0で勝ち、6連勝を飾った。先発の藤浪晋太郎投手が6回途中まで5四死球(3四球、2死球)を与えながら、3安打6奪三振無失点に抑え今季2勝目。甲子園では2017年4月27日・DeNA戦以来4年ぶりの白星を挙げた。長らく低迷していた剛腕は、果たして完全復活したのか。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として21年間活躍した野球評論家、野口寿浩氏が分析した。

調子がいいのか悪いのか、つかみどころのない“怪投”ではあった。すっぽ抜けて捕手の梅野も捕れない球が数球あり、そのうち2球は水口球審を直撃。そうかと思うと、剛速球がコースいっぱいに決まる。4回には1死からスライダーを山田の左肩付近にぶつけ、続く村上は3球三振に仕留めたものの、青木に右前打、塩見に四球を許し、満塁のピンチを背負った。しかし、ここで内川を2球で追い込むと、3球目のスライダーはバットの先に当たり、力ない二飛に終わった。

2点リードの6回、2死一塁から塩見に死球を与えたところで、2番手の小林にマウンドを譲った。5回2/3で94球。余力はあっただろうが、小林、岩貞、岩崎、スアレスの盤石の救援陣にあとを託した。

「決していいとは言えない内容でしたが、ともかく6回途中まで抑えた。昨年の酷かった時期に比べれば雲泥の差です」と野口氏。「昨年は死球を与えるたびに『うわー、やっちゃった、どうしよう』という表情を見せていたが、この日は帽子を取って謝罪はしていたけれど、『しようがない』といった顔をしていた。切り替えはできていた。何らかの心境の変化があったのだと思います」と指摘する。

昨年の経験が「考え直すきっかけになったのではないか」

昨季は新型コロナウイルスに感染して出遅れ、7月に1軍昇格したものの先発として結果が出ず、9月14日に2軍落ちした。しかし、1軍で集団感染が起きたことを受けて同26日に緊急昇格。以降は中継ぎに役割を変えて好投した。野口氏は「個人的には、本格的にリリーフに転向した方がいいのではないかと思ったほどハマっていた。この経験のお陰で、リリーフが毎日どんな準備をして、どんな気持ちでマウンドに上がっているかを学び、自分が先発するなら、最低限どんな覚悟で臨まなければならないか、考え直す機会になったのではないか」と推察する。

ルーキーイヤーの2013年から3年連続2桁勝利を挙げた藤浪だが、16年から下降線をたどり、2019年は1軍登板がわずか1試合で0勝。昨年も1勝6敗に終わった。復活の兆しが見える今季は、何勝できるのだろうか。

野口氏は「現時点で勝利数を予想するのは難しい。開幕投手を務めた藤浪は今後も相手のエースと対戦するケースが多くなる。広島の大瀬良が故障で戦線離脱したりもしているが、巨人の菅野との対決は藤浪個人にとっても、チームにとってもポイントになるのではないか」と見る。

一方、この日は打撃でも5回に通算3号となる今季1号2ランを放ち、チームの全得点をたたきだした。フルカウントから石川の直球を振り抜いて左中間席へ運んだ豪快な打撃もまた、魅力いっぱいだ。

「阪神の先発投手陣は秋山(拓巳)も打撃がいい。相手バッテリーにとっては、本来自動的にアウトを計算する投手も警戒しなければならないとなると、大きな負担になる。打撃のいい投手はたいがいバントもうまいので、貴重な戦力です」と野口氏うなずく。まだまだ危うい雰囲気も残してはいるが、チームを16年ぶり優勝に導けるか、藤浪の今後の投球に注目したい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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