日本食をやめると認知症の発症リスクが高まる?「味噌は塩分過多で健康に悪い」は誤解

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「PIXTA」より

年間40万トンも生産され、日本の食卓に欠かせない味噌ですが、その起源は紀元前1世紀頃の中国で広く食された、大豆や雑穀と塩を発酵させた「豉(し)」と呼ばれる食品だと考えられています。

日本には7世紀頃、飛鳥時代に伝わりましたが、そのままでは日本人の口に合わなかったのでしょうか。まもなく、工夫が加えられた「未醤」という、中国にはない調味料が8世紀頭に登場しています。「みそ」という呼び方も「未醤=みしょう」が変化したものだと考えられています。

「味噌は塩分過多で健康に悪い」は誤解

味噌は、良質の植物性たんぱく質を多く含む大豆を蒸した後に麹等を加えて、発酵・熟成させた発酵食品です。大豆が良質の植物性たんぱく質を多く含む食品であることに加え、発酵によって生成されるアミノ酸やビタミン類を豊富に含んでいます。

私たちは体内で、摂取した食品を原料にして、さまざまなアミノ酸をつくり出して生命維持に利用していますが、生命維持に必要であるにも関わらず、体内でつくり出すことができず、必ず食品から摂取しなければ生きていけないアミノ酸が9種類あります。これらのアミノ酸を必須アミノ酸といいますが、味噌は必須アミノ酸9種類すべてをバランス良く、しかも豊富に含む食品です。

その他にも、健康を維持するために欠かせないビタミン、ミネラル、食物繊維、炭水化物などを味噌は多く含んでおり、1種類の食品でこれほどたくさんの栄養を含むものは、他にはないと言われているほどです。

しばしば「味噌汁は塩分摂取過多になるので良くない」と言われ、塩分を制限するために味噌汁を控えるというビジネスパーソンもいらっしゃいますが、味噌汁1杯あたりの塩分量は約1.2gです。1日の健康成人塩分摂取基準量は男性7.5g未満、女性6.5g未満とされていますので、食事1回に1杯程度の摂取であれば塩分摂取量としても問題なく、味噌に含まれる健康に良い成分の摂取効果が、塩分の悪い効果をはるかに上回ります。

また、味噌汁の具を工夫することで塩分摂取量を減らすことも可能です。たとえば、ほうれん草、いも類、春菊などカリウムを多く含む具材は塩分の体内吸収を防ぎますし、わかめやごぼう、こんにゃくなど食物繊維の多い具を選べば、塩分の排出を促進し、塩分の過剰摂取を防いでくれます。

味噌に最も多く含まれる必須アミノ酸「ロイシン」の構造式

日本食をやめると認知症リスクが高まる?

味噌は日本食の代表的食材ですが、味噌を含む日本食を摂っている人は認知症のリスクが低いことが、多くの研究で知られています。一方で、日本食を続けていた人が、それをやめるとどうなるのでしょうか。これを読んでくださっているビジネスパーソンの中には、新年度で転勤となり、食生活のパターンが日本食から洋食に変化してしまった方も多いのではないでしょうか。

東北大学の研究者らが3000人以上の高齢日本人を平均5年間追跡調査し、日本食の食生活を続けていたものの、そこから遠ざかってしまった人は認知症リスクが上昇してしまうことを明らかにしました。つまり、日本食の認知症抑制効果は、日本食を食べ続けている間において有効だと思われるのです。

この研究においては「日本食らしさ」の定義として、米飯・味噌汁・海藻・漬物・緑黄色野菜・魚・緑茶を挙げ、それぞれについて摂取量が多い場合はプラス、牛肉または豚肉の摂取量が多い場合にマイナスとして、一人ひとりを採点しました。点数が高いほど、日本食パターンに近い食生活をしていると判定することができます。

実験参加者を得点によって分類し、認知症の発症度合いからリスクを評価しました。5年間の追跡期間中に全体の約7%にあたる231人が認知症を発症したことが確認されましたので、食生活に関する得点が5年間変化しなかった人たちの認知症発症率を基準として、得点が上下した人たちの評価を行いました。

その結果、5年間で日本食らしい食生活から遠ざかって、得点が2点以上低下した人たちに対して認知症発症リスクが高まることが確認され、一方で得点が上昇した、より日本食を摂取するようになった人たちは、得点の上昇に応じて認知症発症リスクが低下するという相関関係があることがわかりました。

つまり、摂取する食品のパターンが日本食らしさに近づくことは、認知症発症を回避することに役立ち、逆に、日本食らしい食品を摂取しない生活に近づくことは認知症リスクの上昇と関連するということです。

メカニズムは十分に解明されていませんが、地中海食同様に、野菜や果物、魚の摂取量が多い日本食は抗酸化・抗炎症作用を持つ食品成分を豊富に含むため、神経細胞のダメージを抑え、認知症リスクを抑制するのではないかと推測されています。

(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部)

【参考資料】
全国味噌工業協同組合連合会 Webサイト

日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)

味噌の栄養価について」(国立栄養研究所)

Changes in a specific dietary pattern and incident dementia: A prospective cohort study