【追う!マイ・カナガワ】開港記念日なぜ休み?(下)ハマっ子には「当たり前」

現在の横浜開港祭の元となった「第1回横浜どんたく」=1982年6月、山下公園

 「横浜市の小学校では、なぜ開校記念日でなく開港記念日が休みなのでしょう」。6月2日の横浜開港記念日を巡り、保護者から「追う! マイ・カナガワ」に疑問が寄せられた。県西地域出身の記者は横浜で開港記念日が休みになるとは知らなかった…。休みとなった背景を探ると、寒村から国際都市へと変貌を遂げたハマの原点が見えてきた。

◆他の開港4都市は「ノー」

 全国の他の開港都市でも学校は休みなのだろうか。横浜以外の開港4都市に尋ねると、答えはいずれも「ノー」だった。

 神戸(開港記念日・12月7日)や新潟(1月1日)では150周年の際には、横浜が2009年に開国博Y150を開いたように大々的に祝ったというが、普段はイベントもない。函館(7月1日)ではかつては市役所や公立学校の休業日としていたが1986年に廃止し、今では節目の年以外は催しもないという。

 長崎(4月27日)は、さらに事情が違う。1571年のポルトガル船入港により開港したところからカウントし、今年450周年。同市の担当者が「鎖国の間も出島などで外国との交流が途切れることなく続き、外国の産業や文化を取り入れながら国際貿易都市として発展した」と話すように、歴史の長さでほかの開港都市と一線を画す。

 そんな長崎でも記念行事は毎年あるが、学校が休みになることはないという。

 各都市の担当者からは「授業時数を確保しなければ」「その日を特別意識しても、あまり意味がない」などの声も聞かれ、意気揚々と受話器を握る手の力はむなしく抜けていった。

◆横浜のアイデンティティー

 そんなものなのか…。ハマっ子の同僚記者に聞くと「開港記念日が休みなのは当たり前だと思っていた」(30代女性)、「学校が休みでうれしかったし、学校では港を連想させる市歌を歌い、海の近くに住んでいる実感が持てた」(40代男性)。やはり横浜では大事にされてきた日のようだ。この違いは何なのだろう。

 横浜開港資料館の青木副館長が「半農半漁の横浜村が現在の都市に発展したのは、開港により貿易拠点となり、商人が住む街になったから。横浜の繁栄は開港と共にあり、アイデンティティーだ」と解説してくれた。なるほど、街の原点だから大切なのか。

 青木副館長は、こうも続けた。「横浜は外から入ってきた人々がつくり上げ、『3日住めば、ハマっ子』と言われるように誰をも受け入れる街。開港以来の多様な価値観を見つめ直す日として、これからも大切にしていければ」

 取材を終え、港近くの同館を出た。広がる街並みは、以前よりカラフルに見えた。

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