病児保育事業者が苦境 コロナ禍で利用者が大幅減

看護師を配置するなど病児保育の様子を説明する西田施設長。コロナ禍で利用者は激減している=大和市中央林間4丁目のバンビーニ

 3年前に大和市内で開業した病児保育事業者が苦境に立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大で利用者が大幅に減り、クラウドファンディング(CF)で募った寄付金を運営費の一部に充てている。感染の収束が見通せない中、事業者は公的支援の強化などを求めている。

 2月24日~4月9日にCFを行ったのは同市中央林間4丁目の「十六山病児保育室バンビーニ」(定員15人)。地元で保育所を運営している社会福祉法人・勇能福祉会が2018年4月に開業した。CFでは目標額の100万円を上回る159万円が寄せられた。

 病児保育は、急な発熱や感染症などで一般の保育所に預けられなくなった乳幼児を一時的に受け入れるサービス。仕事を休めない保護者にとって安心できる子育て支援事業だ。

 市内の病児保育事業はバンビーニを含め3カ所あり、定員は計34人。3カ所態勢は子どもの数で比較すると県内自治体でトップクラスで、市は子育て施策の手厚さをアピールしてきた。

 しかし、コロナ禍で保護者の在宅勤務が増えるなどして利用者が激減。開業から間もないバンビーニは、2020年度の利用者が前年度より413人減の40人に落ち込んだ。20年度は約1700万円の赤字を見込み、今回初めてCFによる寄付を呼び掛けたという。

 西田恵美施設長(42)は「想定を上回る寄付をしてもらい助かった。利用者が見込めず、当日のキャンセルも少なくない病児保育は元々採算性が高くなく、コロナ禍で打撃を受けた。使命感から資金を捻出して経営を維持してきたが、限界に近い」と窮状を訴える。

 病児保育事業に対する補助金は国、県、市が3分の1ずつ交付。基礎分に利用者数に応じて加算される仕組みで、一般の保育事業に比べて変動幅が大きいのが課題だ。医療機関に併設されていない単独型施設にとっては、医師の回診費負担も大きいという。

 全国各地で多くの病児保育事業者が赤字経営を強いられる中、関係者が事業を安定化する上で有効策に挙げるのが広域利用と情報通信技術(ICT)を使った予約の推進だ。個別施設への電話予約から、空き情報を近隣自治体で共有したネット予約システムを導入して利便性を高めることで、稼働率の向上を目指す。

 バンビーニは相模原市や東京都町田市など市外在住者の利用が全体の3割を占めるが、稼働率はコロナ禍以前の19年度でも13%にとどまった。相模原、町田、八王子(東京都)の3市は連携協定を締結し、相互利用を今年1月にスタートさせており、大和市にも参加を求めている。

 大和市ほいく課は「人口が増加する市北部で需要が大きいが、利用実績から市全体のニーズは足りていると認識している。市外利用者が多く、市民の税金を投じる補助金を増額することに理解を得るのは難しいと考えている。広域利用の必要性は感じており、自治体間でどう応分の負担をしていくのか、県に調整を要望した」と説明している。

 西田施設長は訴える。「子どもの命を守り、子育てと就労を支えるため、病児保育を継続可能な社会インフラにしなければならない。最低限の運営ができるよう、回診への補助など現行制度を見直してほしい」

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