東京に疲れた人が知っておきたい、地方での可能性を広げる“第3の働き方”

「経済的豊かさ」は東京が最下位なのに

前回、「東京の「経済的豊かさ」は全国最下位という衝撃 」では、中間世帯にとって、収入だけでなく支出も考慮した「経済的豊かさ」は、東京都は47位、つまり全国最下位であることをお伝えしました。

しかし、だからといって、「東京よりも地方が良い」とはならないのが、東京一極集中の難しいところです。地方から東京に人が集まる理由は、東京のほうが魅力的な仕事が多く、余暇やレジャーといった日々の楽しみが充実しているからです。

地方に、やりがいのある仕事や、生活のハリや刺激が得られる機会を増やすことが、東京一極集中を解消し、地方創生のためには必要なのです。


日本は、地方での雇用創出0%

地方創生のために国や自治体はこれまでも、企業の誘致や起業の支援に取り組んできました。しかし、厚生労働省の調査によると、日本はもともと開業率が4.4%しかありません。この数字は欧米諸国と比べても少なく、日本は起業が少ない国とされています。顧客や取引先は都市部のほうが多いため、地方で生まれるベンチャーはさらに限られます。

OECDは2018年、2006年から2016年までに増えた雇用数(net job creation)は、日本は100%首都圏に集中していると報告しました。この間、首都圏で増えた雇用数は、アメリカは1%、ドイツは7%、イギリスは34%で、他国では雇用の大半は首都圏以外の地域で生まれています。日本に次いで首都圏の割合が高いフィンランドであっても、首都圏の割合は96%で、雇用創出が首都圏に100%に集中している国は日本しかありません。

他国では首都圏以外の地域でも新たな雇用が生まれているにもかかわらず、日本だけは地方では新たな雇用を生み出せていないのです。これでは地方から東京に人材が流出しても仕方ありません。

2020年12月に生まれた“第3の働き方”

地方は都市部に比べて商圏が小さいため、儲けのためのビジネスがなかなか成立しません。一方で、超高齢化や人口減少により、社会課題は深刻化しており、地方で暮らす人々のための事業サービスが必要という、二律背反な事態に直面しています。

そのようななか、地域の生活に根ざしたビジネスを可能にする「協同労働」という働き方が、2020年12月に整備されました。

協同労働(労働者協同組合)は、雇用労働とも、自営とも異なる第3の働き方です。働く人自らが出資して所有者となり、経営と管理の責任を負い、さらには仕事にも従事します。誰もが、経営者であり、労働者でもあり、みんなの意見をもとに事業を運営していく、そんな働き方です。

協同労働に関する労働者協同組合法は、2020年12月に成立したばかりです。この法案をめぐっては、全国の市区町村のうち954もの議会で、早期制定を求める意見書が採択されています。地方で雇用を生み、事業を続ける新たな形態として、大いに期待されているのです。

儲けのビジネスではなく、支え合いのビジネス

協同労働は、株式会社のように利益をあげることが目的なのではなく、生活にねざした困りごとを自分たちで解決するためのビジネスです。

2020年に法的枠組みが整備される前から、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会や、生活クラブ生協から生まれたワーカーズ・コレクティブなどのさまざまな団体が活動をしてきました。2年後の法施行に向けて、今後、労働環境を整えたり、新たな団体が生まれたりしていくことでしょう。

協同労働の最大の特徴は、出資口数にかかわらず誰もが均等な議決権をもち、組合員の意見を経営に反映する方法を定めなければならないため、働き手ひとりひとりの意見を尊重することです。

儲けるための営利のビジネスには共感できなくても、地域や生活の困り事を解決するために、仲間とともに経営するビジネスになら取り組みたいという人はいます。地方における共助のビジネスに要注目です。

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