子供が家具を壊しても対象?火事だけじゃない、意外と知らない「火災保険」の補償

ファイナンシャルプランナーとして数千人の家計相談を行い、いつも感じるのは「保険」を使いこなせていない人が本当に多いということです。

保険と聞くと、生命保険を思い浮かべる人が多いのですが、今回は、ほとんどの家庭が加入しているけれど、いまいち理解していない「火災保険」について紹介します。


加入している火災保険をきちんと答えられますか?

賃貸で家を借りると、入居する際火災保険への加入が条件になっています。また、住宅ローンを組む際にも火災保険の加入が条件になっていることがほとんどです。世帯主であれば何かしらの火災保険に入っているでしょう。

ただし、家計相談の際にどの火災保険に入っているかと聞いて、保険会社の名前も思い出せない人は意外に多く、そもそも「加入していたっけな?」と思い出せない人もいます。どのような内容の保険か、その補償内容を正しく答えられる人は稀です。

火災保険は、家が火事になった時に家を修復する為に使うものなので、火事にならなければ関係ないと思っているかもしれませんが、火災保険に「破損・汚損」の特約を付けていると使用頻度の高い保険に生まれ変わります。

知っているだけで得することが多いので、ぜひ確認してくださいね。

火災保険と家財保険の違い

火災保険は先述の通り、住宅を買ったり借りたりするときに加入します。ただし、自分で比較検討をすることが少なく、不動産仲介会社や住宅メーカーにお薦めされるがままに入る人も多いでしょう。

そもそも火災保険とは、損害保険の一種で、火事や落雷、風水被害などの事故によって起こった建物の被害を補償する保険です。

めったにないけれど、料理をしていたら油に引火してしまい台所が煤だらけになってしまったとか、場合によっては全焼してしまった場合に建物や浴槽、調理台、ふすま、網戸、物置等が保険の対象になります。

それに対して、家財保険は、タンス、ベッド、家具や、冷蔵庫、パソコン、カーテンや洋服が火事や落雷、風水被害で損害が生じたときに補償されます。ただし、現金・小切手・有価証券・データ・自動車などは家財に含まれません。また、高価な絵やツボなどの骨董品や宝石などの貴金属で30万円を超える物は「高額貴金属等」や「明記物件」とされ、補償の対象外になります。もし、このような高額なものも補償の対象にしたい場合は、「高額貴金属等」を含む設定にする必要がありますが、その分の保険料が高くなります。

また、盗難の補償を付けている場合は、自宅にあるものが盗まれた場合に補償されます。自転車が家にあるときに盗まれたという場合だと盗難の対象になるのですが、駅前に置いていて盗まれた場合は、補償の対象にならないので注意が必要です。

火災保険や家財保険は、一般的に以下の物が対象になります。

・火災・落雷・破裂、爆発
・風災・雹(ひょう)災・雪災
・水災
・水漏れ
・盗難
・破損・汚損等

ただし、水災や盗難などを個別に抜くことや選ぶことができるので、保険料はどこまでを補償の範囲とするかや、建物の構造や所在地、用途などによって異なります。また、保険金額の限度として損害額が保険料として支払われますが、保険を付けている建物の評価額か、再度同じものを建てる場合の費用かを選ぶことができます。この際、同じレベルの建物を再購入(新築)する場合は価格協定保険特約をつけることになります。

保険は“最低限の補償”を支えるものと考えよう

家財保険に1,000万円など大量の金額をかけている人も多くいます。確かに、全てのものを現状復帰するには1,000万円を超える金額がかかることもありますが、万が一火事になって家財が全損というケースはめったにありません。

万が一に備えるのはいいことですが、本当に災害を受けたときは、生活するために最低限のものがあればいいと私は考えます。保険は、万が一の場合に生活が立ち行かなくならないようにするものです。完璧な現状復帰を前提に保険に入ることは、傘に例えるなら、絶対に濡れたくないからと毎日大きな傘を持ち歩くことに似ています。晴れの日に、万が一の雨に備えて持ち歩く傘は、小さな折りたたみ傘で十分ではないでしょうか。

ちなみに、数年先の分まで火災保険料を払っている人も、解約すると、基本的に経過年数を覗いた部分は月割で返ってくることが多数。保険の入りすぎや、保険料が高いところに入っている可能性があれば、複数社を比較して入り直すと家計の見直しになるケースがあります。

地震保険は加入前に吟味することが必要

地震保険についてですが、日本はいたるところで地震が起こるため地震保険に入っておきたい人も多いでしょう。ただし、地震保険は金額が高いので

・住んでいるところの地盤がどうか?
・住んでいる家の耐震強度は?

などを考えて慎重に選びましょう。
耐震強度や地盤がしっかりしているなら割りに合わないこともあるので、一度地盤や家の構造なども確認しましょう。

地震保険は5年更新となり、5年で入り直さないといけません。

地震保険の保障でカバーされる範囲は、一緒に加入している火災保険の保険金額の30%~50%ということになるので、全損しても火災保険の半分までしかでません。これだと同じ家の建て直しはできないので、地震が起こって全損した場合の一次避難用のお金として考えておきましょう。

例えば、火災保険が建物が全損の場合2,000万円の保険金がでるとしたら、600万円から1,000万円までしか保険金が出ないことになります。

あと家財も地震保険の補償対象にすると、金額があがります。先ほどの傘の例え同様、入りすぎの人は少し省エネ化しても良いのではないでしょうか。

地震保険は、どの損害保険会社から加入しても金額は一緒です。基本費用は国が中心になって全体で決めているためです。火災保険の費用は損害保険会社によって違いがあるので、こちらは複数を比較してもよいでしょう。

大いに活用したい「破損・汚損」の補償

最後に伝えたいのが「破損・汚損」についてです。火災保険や家財保険に入り、「破損・汚損」を補償対象に付けていると保険の利用可能機会が多くなります。こちらは我が家の写真になります。

カーテンレールがへし折れています。

2人の子供が、カーテンに巻きついて遊んでいたのですが、思いっきりこけてこうなりました。賃貸物件で正直焦りましたが、火災保険会社に電話すると、「それは大変ですね。お子様に怪我はなかったですか」ってやさしく対応してくれた上、修理代は保険が適用されて0円でした。

この「破損・汚損など」は不測且つ突発的な事故によって備え付けのものが壊れた場合に補償の対象になります。「不意の事故」には子供が遊んでいて故意ではなく壊してしまったというのも含まれます。建物が保険の対象の場合であれば、偶然の事故による建物の被害の修理費用が対象になりますし、家財が保険の対象になっていれば、うっかりテレビを倒して壊れてしまったなどのケースも補償の対象になります。

続いて、この写真。以前持ち家のマンションに住んでいたときの写真です。

かなり汚いのですが、新築で、3年めくらいです。

そもそもは、リビングに置いてあった観葉植物に水やりをした結果、その水が溢れてて、敷いてあったマットの下を侵食し見事にフローリングが腐ったのです。

長い時間放置して腐食した場合は保険の対象になりません。ただし、このあたりにダイニングテーブルがあって、椅子を後ろに引いた際に「ばきっ」と剥げたことや、その剥げたところを、子供が「ペリペリ」と剥がしたのは「不測かつ突発的な事故」として認めてもらうことができました。

フローリングの下は全面床暖房が入っていて、張り替える場合はフローリングと床暖の接着剤を剥がして付け直しになり、非常に高額になるのですが、保険で修復ができました。

「破損・汚損」による修理は何度でも利用でき値上がりもない

これは少し特殊なケースなので、保険会社や審査に来る人の見方によっても違いがあるかもしれません。火災保険がおりるかどうかのときは、「困っていること」「不意の事故であること」はしっかり伝えることが大切です。

「破損・汚損」による修理は何度でも使うことが可能ですし、利用しても自動車保険のように保険料はあがりません。

加入することが、半ば強制的な火災保険も、「破損・汚損など」をつけて、使い方を知っていると、もとが取れることもあるので、知っているか知らないかで明暗わかれます。ご自身で加入している火災保険の内容をしっかりと把握しておくことが大切です。

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