好評連載、野球女子生態図鑑第2弾!「監督女子」の個を見るチカラとは?
「野球が好きな女子」とひとくちに言っても、「好き」のベクトルは多岐に渡る。応援する選手やチーム、見たい視点はそれぞれ異なる。野球好き女子のコミュニティ『NFB』(日本やきう女子機構)による『野球女子の生態図鑑』の第2弾は、監督のように個とチームの成長二つにまなざしを向け続ける「監督女子」について紹介する。
なぜエラーした選手を使い続けるのか――
監督。それはチームの目標である「勝利」をつかむため、先頭に立って舵を取る人のこと。
チームという集合体を動かす立場だが、同時に選手一人ひとりと向き合う存在でもある。
やきう女子の中にも、「個」と「チーム」、常にこの二つに眼差しを向け続け、どうしたら個とチームが一緒に成長していけるのか考える「監督女子」がいる。NFBの監督女子は、元保育士で学童保育では所長も務めた経験もある、吉川由(以下、ゆゆ)だ。
まだ、小学校低学年の頃、巨人の試合をテレビ観戦した際、若かりし阿部慎之助捕手がイージーなキャッチャーフライを落としたのを見たゆゆは子どもながら、こう口にした。
「なぜあの選手は交代にならないの?」
九州の野球一家で育ったゆゆ。父は少年野球のコーチ、兄も野球をやっていた。父は、「(当時の監督の)長嶋さんが期待しているからだよ。それと、使い続けることで上手くなることがあるからだよ」と話したという。
「その言葉を聞いてからは、どんどんそうかもしれないと感じていった。それまでは打てないなら、守れないなら、交代すればいいと思っていたけど、花開くまで待つこともチームが強くなるために大事なことなんだと知った」(ゆゆ)
学生時代は小中高と毎夜テレビ観戦をし、福岡の大学へ進学した際も、「相部屋の寮ではテレビ観戦ができない!」と一人暮らしを選んだと言うほど、長いこと野球観戦にエネルギーを注ぎ続けてきた。
今では、開幕前に「先発ローテーション」を考えることが毎年の楽しみになっているそうだ。昨シーズンの成績、キャンプの調子、オープン戦などが参考材料。先発ローテーションだけでなく、スタメンも投打のポイントも勝手に予想し、野球観戦に挑むのが監督女子だ。
野球女子古参が気になる勝ち負けの「中身」
野球ファン古参だからこそできる野球の楽しみ方を、監督女子は知っている。おそらく毎年、誰よりも充実した「開幕前」を過ごしているのが彼女たちだろう。
もちろん、開幕以降も監督女子の観戦は猛烈に充実している。個とチーム、この二つの成長に眼差しを向け続ける監督女子にとって、試合は「ただ勝てばいいわけではない」。
例えば、点の取り合いになるなど試合が“壊れた”ケースが時に存在する。両軍のディフェンス力が崩れたり、一方が大量得点するワンサイドゲームもそう。守備力の低さから四死球、失策、そして失点につながり、ワケのわからない展開になってしまうのが特徴の一つだが、監督女子はこのような展開を好まない傾向にあることが、ゆゆの話からわかった。
「細かいことだけれど、先頭打者を簡単に出さない、サインミスをしない、ノーアウトで得点圏に走者がいるときに確実に1点を取る、みたいなことが大事」とゆゆは、高校野球の監督バリの野球観を語る。チームが成長するためには、勝った、負けたの大雑把な結果だけでなく、その過程に目を向けることが大切なのだと監督女子は知っているのだ。
最後に。昨年度まで、学童保育で所長という監督ポジションを担ってきたゆゆは、野球と仕事も重なる部分があることを教えてくれた。「自分の仕事でも、長い目で職員を見て、いいところに目を向けながら育てていかないといけないと感じてきた。集合体としてどうしていくべきかを考えることも大事だけど、まずは個があっての集合体だから」(ゆゆ)。
そういえば、野球漫画『MAJOR』の主人公・茂野吾郎も、「自分と戦って、仲間と戦って、そして相手と戦って勝つ! そこで全員が苦しんで流した汗の分だけチームワークは生まれるんだ!」と、チームはそもそも個の集合体であることを力説していた。
もしかしたら監督女子が長い時間軸の中で養った野球選手の見方、野球チームの見方というのは、そのまま日常生活のヒントになるものがあるかもしれない。
◇NFB(日本やきう女子機構)
野球好きな「やきう女子」が集まるコミュニティ、日本やきう女子機構(通称、NFB)。slack上での様々なトピックを通じたメンバー同士の交流をしながら、メンバーによる観戦イベントの企画、野球観戦がもっと楽しくなる情報発信をする『NFBマガジン』『球場コーデ』の運営などを通して、野球観戦の楽しむコミュニティ。
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