被災動物の救護に奔走 横浜の兵藤さん 獣医師生活60年、本に

ペットの里親紹介について説明する兵藤さん

 横浜市旭区の獣医師兵藤哲夫さん(81)が半生をつづったエッセー「獣医業60年 動物病院119番 感謝」(神奈川新聞社刊)を出版した。「すべての生き物に尊厳を」をモットーにした自らの仕事や、ペット共生社会の在り方について考える内容となっている。

 兵藤さんは三原山噴火、阪神・淡路大震災、東日本大震災でいずれも被災地入りし、取り残された動物の救護活動を行った。

 「置き去りにされ、餓死した多くの動物たちを見た。獣医師として災害をどう乗り越えたらいいのかと痛切に感じた」。その後、環境省のペット同行避難のガイドラインや、犬猫のマイクロチップ装着義務化へ尽力したという。

 兵藤さんは日本動物福祉協会理事などを歴任し、人気ラジオ番組「全国こども電話相談室」(TBS)の回答者も長年務めた。神奈川新聞連載のペット相談コーナーは一冊にまとまるなど活動は幅広い。

 大学卒業後すぐに保健所の狂犬病予防員として犬の殺処分に従事した体験が、動物の尊厳を考え「正しく飼う」意識を深めたという。ペットの里親紹介を開催し、現在はアニマル基金を設立し、動物福祉支援にも取り組んでいる。

 兵藤さんは「平等で差別をしない動物は、自然そのものの心地良さ、満足感を人間に味わわせてくれる。この幸福感を多くの人に体験してほしい」と話す。

 四六判、216ページ、税込み1650円。書店、新聞販売店で扱っている。

 問い合わせは神奈川新聞社出版メディア部電話045(227)0850。(小林 一登)

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