外国人労働者たちの実話をもとに描く圧巻のリアリズム── 映画『海辺の彼女たち』公開に寄せて池松壮亮、小田香、伊藤詩織らの絶賛コメントが到着! スペシャルコメント予告解禁!

昨年開催の第68回サンセバスチャン国際映画祭新人監督部門に選出され、その後に第33回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で凱旋上映されるなど、国内外の映画祭で着実に評価されている藤元明緒監督の長編第2作目『海辺の彼女たち』(5月1日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開)。

より良い生活を求めて来日したベトナム人女性たちを主人公に、きらめく未来を夢見ながら、過酷な現実と闘う姿を描く。

藤元監督は、前作『僕の帰る場所』で在日ミャンマー人の移民問題と家族の愛を描き、東京国際映画祭「アジアの未来部門」グランプリを受賞。本作でも在日外国人労働者へと目を向け、実際の技能実習生や来日後に失踪した当事者、彼らを支援しているシェルター等での入念な取材を基に、藤元監督が脚本を執筆した。

キャストはベトナムのハノイとホーチミンにてオーディションをおこない、100名以上の候補者のなかから選ばれた3名のベトナム人女性を迎え、青森県外ヶ浜町で昨年2月に撮影された。

チャン・リュル監督の『柳川』、オール韓国ロケを敢行した石井裕也監督作『アジアの天使』などの公開が控え、近年アジアを舞台にした活動も目立つ俳優の池松壮亮は「この同じ空の下で長い間放置される現実に、胸がはち切れそうになる。事実とリアリズムに徹しきり、硬い意志をもった意義深いこの作品を世に送り出す監督スタッフ、そして海辺の彼女たちに、心からの拍手と祝福を贈りたい」と賞賛の言葉を寄せ、また第1回大島渚賞を受賞した映画作家の小田香は「カメラが4人目の『彼女たち』となり、観る者と共振する。ひとつづきの現実に、観客の我々も生きている」とコメント。

映像ジャーナリストの伊藤詩織は「彼女たちがあなたの姉だったら、娘だったら、人として扱われ、自分を生きて欲しいと願うだろう。真摯に彼女たちと向き合わせてくれるこの映画に感謝する」と称えている。

さらに『愛と法』やNetflixで配信中の『マイ・ラブ:6つの愛の物語 日本篇』が話題のドキュメンタリー映画監督・戸田ひかると、映画評論家の村山匡一郎からのコメントも新たに到着した。

あわせて解禁となったコメント予告では、劇中の長回しのワンシーンを使用し、総勢10名のコメントを見ることができる。このたび新たに届いた5名のコメント全文は以下の通り。(※五十音順、敬称略)

暗闇から、音が聞こえる。

音が静かに暗い冬の街に溶けてゆく。

波の音、風の音、ストーブの音、

異国からやってきて、迷うまいと彷徨う女性達の雪を鳴らす足音、彼女たちの吐息。

音が、世界の一部となって溶けてゆく。

この世界に形を変えて残り続ける格差という奴隷制度。

彼女たちは労働者ではない、ただ生きている。海辺の彼女たちは、それぞれが人生の少ない選択肢の中から最善を選んで日本で暮らしている。この同じ空の下で長い間放置される現実に、胸がはち切れそうになる。

事実とリアリズムに徹しきり、硬い意志をもった意義深いこの作品を世に送り出す監督スタッフ、そして海辺の彼女たちに、心からの拍手と祝福を贈りたい。

──池松壮亮(俳優)

彼女たちはどうしてそこにいるんだろう。どうしてこんなにも真っ直ぐなのだろう。弟の進学を夢見る姉、親に楽をさせたいと願う娘。その願いを消費する仕組みを作っているのは紛れもなく日本社会だった。彼女たちがあなたの姉だったら、娘だったら、人として扱われ、自分を生きて欲しいと願うだろう。真摯に彼女たちと向き合わせてくれるこの映画に感謝する。

──伊藤詩織(映像ジャーナリスト)

ほぼ毎日商店街の鮮魚屋やスーパーで、安くて美味しそうな魚があるかなと見に行く。特価品やお買い得!というシールに胸踊りながら、その安さがなにを物語りえるか、考えたことはなかった。市場から仕入れられ、店頭に並ぶ魚貝は、彼女たちによって仕分けられたのではないか? ふっとそんな可能性を思った。北の場所が彼女たちに与える現実は、日本のいち部分の出来事、ではない。あの現実は、私の現実に確かに繋がっている。無数の、このような繋がりこそが表しているものはなにか。わたしが住む国‏‏‏‏/我々が身を置く共同体。カメラが4人目の「彼女たち」となり、観る者と共振する。「彼女たち」は名無しではない。フォンさん、アンさん、ニューさん、そして藤元明緒さんとスタッフの人たちが協働して生んだ『海辺の彼女たち』という眼差し。ひとつづきの現実に、観客の我々も生きている。

──小田香(映画作家)

窮地に立たされた彼女たちは、前に進む足を止めない。

遠く離れた地で、家族を想い、将来を語り、肩を抱き合い、彷徨いながらも、ギリギリに乗り込む電車やフェリー。

岐路に直面した彼女たちの行く先は、社会の向かう方向によって左右され、私たちの住む町にたどり着く。病院で、バス停で、道端ですれ違う誰かなのかも知れない。隣に乗り合わせたような、そんな感覚と共に彼女たちの物語に入っていく。生命の熱を感じる映画。

──戸田ひかる(ドキュメンタリー映画監督)

「技能実習生」という名のブラック労働が一部で取り沙汰される日本。異国の地で働くベトナム人女性3人の姿を通して、彼女たちの心の世界が生々しく浮き彫りにされる。「技能実習生」の実態を描くレポートとは真逆に、彼女たちの目線に焦点を当てながら、フォン、アン、ニューそれぞれの内面に伴走する映像には、『僕の帰る場所』に続く藤元明緒監督の日本を含めたアジアへの優しく鋭い視線が注がれ、見る者の心を惹きつける。

──村山匡一郎(映画評論家)

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