【MLB】ド軍ターナーとの頭脳戦 ダルビッシュが見せた妙味あふれる“3打席勝負”

ドジャース戦に先発したパドレス・ダルビッシュ有【写真:AP】

ダルビッシュは7回9奪三振1安打1失点、3番ターナーとの対決は見ものだった

■ドジャース 2ー0 パドレス(日本時間18日・サンディエゴ)

パドレスのダルビッシュ有投手は、17日(日本時間18日)の本拠地ドジャース戦に先発し7回1安打1失点、9奪三振の好投を見せたが、打線の援護がなく今季初黒星。全米が注目した、3度のサイ・ヤング賞を誇る左腕クレイトン・カーショーとの初対決で悔しさも味わい、試合後の表情に明るさはなかった。「次はしっかりカーショー相手に勝てる投球をしたいと思います」。右腕は、22日(同23日)からの敵地4連戦での次回登板に向けて気持ちを引き締めた。

ダルビッシュの表情は曇っていた。カーショーとはオフにトレーニングをする間柄で、互いに認め合う存在。その相手に痛恨の押し出し四球を与え息詰まる投手戦で先制点を献上した。ただ、宿敵ドジャース相手に7回を投げ切ったことはこの上ない収穫。許したのは中前へのポテンヒット1本のみ。「世界一強いチームの打線を相手にこういう投球ができたのは自信になる」と胸を張った。しかし、過信はしない。

「自信が付いたからどんどんいくっていう話でもない。あんまり調子に乗らないように、明日の(登板間)1日目の調整をまたしっかりしたいと思っています」

謙虚な姿勢を崩さないダルビッシュは、オンライン会見の最後をこう結んでいる。

「次もしっかり抑えられるように、また頭を使っていきたいと思います」

勝ち星こそつかなかったものの、冴えた“駆け引き”

持ち味の多彩な変化球を配した投球が冴えを見せたこの日、“頭を使った”駆け引きが印象的だったのは3番ターナーとの勝負だった。

1回表の立ち上がりに、ここ数試合で「抜けがいい」と好感触を得る球速が異なるカーブを決め球にして2死を奪った。しかし、ターナーには、カーブを使わず2球で追い込むと、最後は外角への95マイル(約153キロ)の直球を選択。3球で見逃し三振を奪った。切れ味鋭い曲げ球を「そろそろ投げてくる」という意識を捨てられない打者心理を揺さぶる速攻は、次の打席に布石を敷いた。

4回の第2打席、速球系に置いた相手の意識を逆手に利用した。一転して、初球から直球を投げ込むと、2球目のファウルで直球狙いを確認。1-2からの4球目、決め球はスピードと軌道を変える89マイル(約143キロ)の外角カッター。ターナーの体を泳がせ、遊直に仕留めた。

そして6回の第3打席、初球にカッターで誘いファウルを稼ぐと、次はスライダーで幻惑。0-2からの決め球は、内角高めの80マイル(約129キロ)のカーブ。1打席目とは逆に、直球を封印して見逃し三振を奪った。1、2打席目の残像を巧みに利用し、打者心理を読み切ったターナーへの10球は、妙味あふれる配球だった。

9回にダメ押しのソロ本塁打を放ったターナーを“頭”で封じたダルビッシュは、先制点に絡む5回の7番ライリーに打たれたポテンヒットを「運がなかった」と振り返った。

前夜は、延長12回までもつれ、クロネンワース二塁手も投入した9人の救援リレー。2登板連続して救援陣の負担を軽減する7回をダルビッシュは投げ切った。

技術力、精神力、そして運――。勝利に足りなかったのは一つだけ。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

© 株式会社Creative2