【移住・定住強化】帰還支援と両輪で(4月20日)

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 南相馬市は今年度、東京電力福島第一原発事故に伴い避難区域だった小高区などへの移住・定住に関わる施策を強化する。具体的には、市が総合的に取り組む「旧避難指示区域移住定住促進事業」(通称・小高パッケージ事業)を始めた。門馬和夫市長は「若い人を呼び込み、小高区再生の呼び水にしたい」と語る。従来の住民への帰還支援とともに、復興に向けた両輪として推し進め、被災地の再興と活性化に努めてほしい。

 対象は(1)農業希望者(2)福島ロボットテストフィールド関係者・起業家(3)浜通りの新産業創出関係者(4)地域密着型ビジネス創出者(5)Uターンなどの移住希望者-としている。農業希望者に対しては家賃補助や農地確保、ロボテス関係者・起業家には交流機会の創出、Uターン希望者には生活環境や住居確保の支援をする。移住・定住に関しては全国の市町村が競って施策を展開しており、ライバルが多い。ロボテスなど他にはない南相馬市の特色や優位性を広くアピールしていくべきだ。

 組織面では経済部に移住定住課を新設し、小高区役所に「おだかぐらし担当課」と相談の総合窓口を設けた。総合窓口では、ワンストップで希望者の目的に合った体験メニューの企画・実施、働き方や暮らし方を提案する。市に移住・定住の相談をする際、複数の担当課を回らなければならないなどの問題が指摘されてきた。市がこうした点を改善したことは評価したい。

 新しく来た住民が地域にうまく溶け込めないという問題については、区内の有力者らを起用した案内人制度を新設し、希望者に適切な助言をすることによって不安を解消するとしている。新たな制度によって元々の住民と移住・定住者の心が一つになり、共に復興を目指すという理想の姿を実現してもらいたい。

 第一原発から二十キロ圏内の小高区と原町区の居住者は、東日本大震災以前は約一万四千人いたが、現在は三割の約四千二百人にとどまる。ただ、家族の問題などで帰還したくてもできない人は少なからずいるだろう。原発事故から十年が過ぎても避難者への働き掛けや支援をおろそかにしてはならない。

 小高区では移住して酒造りに取り組む若者がバーを開店し、にぎわいの拠点にする活動を始めた。原発事故で一度住民不在になった場所だからこそできる挑戦もある。地域には少しずつ新しい風が吹き始めた。この風が大きなうねりとなり、新たな可能性が生まれるよう今後の成果に期待したい。(風間洋)