ALPSで炭素14除去できず、生態系に影響

 国際NGOグリーンピース・ジャパンの鈴木かずえ氏は東京電力福島第一原発事故で増え続ける放射性物質汚染水の多核種除去設備処理後の処理水対策に、政府が決定した「海洋放出」以外にも対策があるとし、海洋放出による長期にわたる生態系への弊害を訴え、放出しないよう警鐘を鳴らしている。

 政府はALPS(多核種除去設備)ではトリチウムだけが取り除けないような説明をしているが、放射性物質の「炭素14」も取り除けない。

 また鈴木氏は「取り除くはずだった放射性物質なのに残っている放射性物質にはストロンチウム90、セシウム137、セシウム134、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129、プルトニウムなどがあり、ストロンチウム90はカルシウムに化学的性質が似ていて、人の体内では骨や骨髄に蓄積し、発がんの危険性がある」。

 また「炭素はすべての生きものの基本構成要素なので、炭素14は体内のあらゆる場所で細胞DNAを損傷する可能性もある」と憂慮し、海洋放出への危険に警鐘を鳴らしている。

 鈴木氏は「これらを含んだ汚染水が海に放出されれば、放射性物質は海水に紛れてそれぞれ世界中に拡散し、生態系の中で生態濃縮が起こります。マグロやキンメダイに水銀が濃縮されるように、のちの世代にわたって汚染が続く。たとえばセシウム134のように半減期が2.1年と比較的短い放射性物質もありますが、炭素14の半減期は5730年。放出が始まれば完了まで数十年かかりますが、そのあとも、汚染は数千年以上にわたって海の中で続くのだ」と人類のみでなく、あらゆる生態系への影響から海洋放出は許してはいけないと反対を呼び掛けている。

 鈴木氏は「グリーンピースは海外で運用されているより高精度な処理設備を導入して放射性物質を限界まで取り除いたうえで、現在のタンクより大型で堅牢なタンクに移し、残りの放射線値が一定以下に下がるまで当面のあいだ保管し、その間に放射性物質を除去する技術を開発するという解決策を提案している。保管用地が足りない、というのは事実に反しており、汚染土を保管している場所を汚染水タンクの用地として利用することもできるし、用地が足りないなら土地を提供すると名乗り出ておられる地元の方もいる」と反論する。(編集担当:森高龍二)

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