DeNA・三浦監督の連敗地獄に思うこと 連敗時に監督たちが見せた“情熱と冷静”

18日の巨人戦で引き分けに終わり、スタンドに一礼する三浦監督(中)

【赤坂英一 赤ペン!!】今のDeNA・三浦監督を見ていると、2006年の巨人・原監督を思い出す。1年生監督と1100勝監督を一緒にするなと言われるだろうが、名将も15年前は勝てずに苦労していた。

06年、巨人は開幕ダッシュに成功するも5月に5連敗して失速。6月にも8連敗と10連敗、7月には9連敗して最後は4位に終わり、4年連続V逸という球団ワースト記録を更新してしまった。

この年、巨人のヘッドコーチを務めていたのが近藤昭仁さん(故人)。1993~95年は横浜監督で5、6、4位。97~98年はロッテ監督として2年連続6位。特に98年に史上最長の18連敗を記録したことは今もファンの語り草だ。

06年、その近藤さんがしみじみ漏らしていた。

「最近、ウチ(巨人)が負けてるからってヒドイことを言うやつ(記者)がいるんだよ。近藤さんはロッテで18連敗したから、10連敗ぐらいには慣れてるでしょうって。負けに慣れたら、プロとしておしまいだろう」

そういえば、近藤監督は負けるたびによく感情をあらわにしていた。横浜時代は負け試合の後、われわれ報道陣をにらみつけて「きょうは(会見は)なし!」とひと言。

ロッテ時代、18連敗の最中は、ベンチ裏でフラッシュを浴びせるカメラマンを「おまえら、おれたちが負けたのがそんなに面白いか!」と怒鳴りつけたりもしている。

それから8年後の06年、東京ドームのベンチで近藤さんは言った。

「あのころは毎晩、眠れなかった。藤田(元司・元巨人監督=故人)さんが俺を心配して、自分用に処方されたハルシオン(睡眠導入剤)を送ってもらった。通常より効き目の強いやつをね。本当はそういうことをしちゃいけないんだけどな」

巨人ではそれから11年後の17年、高橋監督が球団ワーストの13連敗を記録している。薄暗いベンチ裏で「この現実をみんなで受け止めないといけない。明日も試合はあるから」と、今の三浦監督のように言葉を絞り出していたものだ。

19年には、ヤクルトが持つ球団ワーストで、セ・リーグタイの16連敗を記録。小川監督もいつも感情を押し殺し、淡々と敗因を分析していた。

最近はどんなに負けても、感情をあらわにする監督はいない。負け試合の後、私の顔を見つけると、質問する前に「何を書きに来た、この野郎!」と吠えていた楽天時代の星野監督(故人)が懐かしく思えたりもする今日このごろである。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

© 株式会社東京スポーツ新聞社