呉念庭、若林、愛斗… 主力に故障者続出も、穴を埋める若手が躍動する西武の強さ

西武の呉念庭(左)と若林楽人【写真:荒川祐史】

開幕戦で4、5、6番を担った主力3人が離脱も呉念庭らが活躍

危機的状況に陥った獅子を救うのは、主力の代わりに入った選手たちになるかもしれない。西武は3月26日のオリックスとの開幕戦で栗山巧外野手、3月30日の日本ハム戦で山川穂高内野手が故障。4月3日のソフトバンク戦では外崎修汰内野手で左腓骨骨折と、開幕戦で4、5、6番として出場した3選手がいずれも戦列を離れる非常事態に見舞われた。

それでも、ライオンズは4月20日時点でロッテと同率3位。首位ソフトバンクまで1.5ゲーム差と粘りを見せている。その理由の一つとして、負傷者の代役として出場選手たちが好調で、現時点では打線の大幅な成績低下を防いでいるという点が挙げられるだろう。

今回は、現在活躍を見せている選手の経歴とその活躍ぶりを中心に、苦境に陥っているチームを救う可能性のある選手たちの顔ぶれと、各選手に期待される役割を紹介していきたい。

呉念庭の年度別成績【表:PLM】

呉念庭内野手は2015年ドラフト7位で入団。正遊撃手不在のチーム事情もあって1年目に43試合に出場したが、打率.194と打撃で苦しみ、抜擢のチャンスを生かすことはできず。翌2017年に源田壮亮内野手が入団したこともあり、その後は1軍での出場機会も減少。2019年には1軍での出場が1試合もなく、28歳を迎える今年はプロ生活の正念場と言える状況を迎えていた。

2020年、呉は2軍での17試合で5本塁打、打率.383、出塁率.479を記録。この活躍によって1軍昇格を果たすと、自己最多の51試合に出場し、打率.227に対して出塁率.320という数字を残した。2軍ではプロ入りした2016年以降全ての年で出塁率.350以上を記録してきた選球眼を1軍の舞台でも発揮した。

今年の開幕は2軍で迎えたものの、山川の故障に伴って1軍に昇格。今季初スタメンとなった3月31日の日本ハム戦でプロ初本塁打を放つと、そのまま5番・一塁に定着した。持ち前の選球眼に打球の力強さが加わった結果、4月20日時点でOPS.863を記録。打線を支える1人となってている。

ドラフト4位若林の他、1位渡部、6位ブランドンも1軍で結果残す

若林楽人外野手はパンチ力のある打撃と俊足・強肩を兼ね備え、トータルバランスに優れた外野手として期待されて2020年ドラフト4位で入団。春季キャンプから1軍組に帯同すると、対外試合・オープン戦を通じて実戦でもアピールを続けた。そして、新人ながら開幕1軍の座を勝ち取ると、開幕2戦目では早くもレフトでスタメンに名を連ねている。

その後は俊足を生かして、4月20日時点でリーグトップの9盗塁を記録。実にシーズン64盗塁ペースで量産する。盗塁王獲得経験のある金子侑司外野手、源田に加えて、西武の機動力野球に新たな武器が加わったことになる。さらに、4月7日の楽天戦では則本昂大投手からプロ第1号となる本塁打も放ち、走攻守にわたって貴重な活躍を続けている。

パ・リーグにおいてルーキーイヤーに盗塁王を獲得した選手は70年以上にわたる歴史の中で1人も存在しない。若林がこのまま盗塁を積み重ねることができれば、リーグの歴史にその名を刻む可能性すら秘めている。あらゆる意味で今後も要注目の存在だ。

西武には、この2選手以外にも、主力離脱の穴を埋める可能性を秘めた選手が続々と現れている。まず、堂々たる体躯で話題を集めた2020年のドラフト1位・渡部健人内野手はファームで5本塁打、4月4日のソフトバンク戦で和田から1軍昇格後プロ初本塁打を放っており、今年中のブレークなるか注目だ。ドラフト6位で入団したブランドン内野手は若林と同様にプロ1年目から開幕1軍入り。開幕2戦目では若林と共にスタメン入りし、3月30日の日本ハム戦ではプロ第1号本塁打を含む3打数2安打4打点を記録した。現在は2軍調整中だが、新人ながら大いに存在感を発揮していただけに、その復帰が待たれるところだ。

愛斗は9日のロッテ戦で2本塁打、若手外野陣の切磋琢磨に注目

また、昨季までは2軍で腕を磨いた西川愛也外野手と愛斗外野手の大阪府堺市出身・花咲徳栄高卒コンビも1軍に昇格し、それぞれスタメン起用のチャンスも得ている。

特に愛斗の成長は著しい。今季は松井稼頭央2軍監督より指名を受け、キャンプ期間中のキャプテン経験もした。「率先してチームを引っ張っていってほしい」という松井2軍監督の期待を背負った今シーズン。4月8日に1軍昇格すると、翌9日のロッテ戦で1試合2本塁打を放ち一気にブレーク候補筆頭に躍り出た。栗山、金子、木村文紀外野手といったリーグ連覇を支えたメンバーはいずれも30歳を超えているだけに若林も含めた、チームの次代を担うであろう若手外野陣の切磋琢磨も見ものだ。

西武はこれまでも、抜けた選手の穴を生え抜きの選手が埋めてチーム力を保つ、あるいは向上させるというサイクルを機能させ続け、その結果として2018年からリーグ連覇を達成した。現在活躍する選手たちの活躍が今後も続き、そのまま主力へと成長していくかどうかは、これからのチームを占う上でも非常に重要なものとなってくる。

今回挙げた選手たちがこの調子で奮闘を続け、主力選手が復帰するまで順位を上位にとどめることができるか。控え選手の出場機会増加は中長期的なチーム力の向上につながるという点で、必ずしも全てがマイナスというわけではない。「育成しながら勝つ」という難しい命題をクリアしつつ、来たる反攻のチャンスを待つことができるか。現在と未来の双方において若獅子たちの躍動がチームの命運を握ることになるはずだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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