日本のブックセラーが「彼女みたいな古本アイドルが日本にも出てほしい」公開記念オンライントークイベントレポート!

世界最大規模のニューヨークブックフェアの裏側からブックセラーの世界を紐解く映画『ブックセラーズ』が、4月23日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開。公開を記念して、日本のブックセラー、「かげろう文庫」店主・佐藤龍さん&「Flying Books」店主・山路和広さんによるオンライントークイベントを開催。ここでしか聞くことのできないディープな内容となった。

映画に登場するニューヨークブックフェアを訪れたことのあるお二人。まずはかげろう文庫・佐藤さんが映画に出てくるブックフェアについて「ニューヨークで行われる世界最大の希少書籍の販売会」と紹介し、実際に訪れた印象を、Flying Books・山路さん「ニューヨークブックフェアは特別。数多く買い付けるというよりは、本当に良いものを数点探しに行くような、他とは全く別格で、ステータスがあるようなブックフェアだと思う」、佐藤さん「参加者は、ただ本を売りに来ているわけではなく、良い本を買いに来ている。中でも、ニューヨークブックフェアは世界中からトップディーラーが、選りすぐりの本をもってきているので、フェアが始まる数時間前、一般のお客さんが入る前のディーラー同士の売買が一番熱いやりとりが繰り広げられている」と裏話を。

また、映画をみた感想は「ブックセラーだけでなく、コレクターさんやオークションハウス、図書館など、様々な立場のブックラバーな方たちの視点も描かれていて、古本屋を数十年やっていても、新たに知ることとかいっぱいあったので、凄く面白いし勉強になる映画」(山路さん)。

さらに映画では、デジタル化などの時代の変化の中で本や書店の未来がどうなっていくのかというテーマも語られていますが、加えてパンデミックが広がる今、改めて本や書店の未来について、山路さんは「この1年、古書の流通量は増えたと感じている。その中で、消費材として役目を終えていく本と、文化財として希少価値をあげていく本との二極化が加速していくと思っている。文化財となる本は未来に残すものなので、デジタル化については心配していませんが、役目を終えていく本については、ディーラーは、何が残るべきで何は残さないか、という取捨選択の編集力を求められているように感じている」、佐藤さんは「この1年、売り上げ自体はあがった。ロックダウン中、みんなが本を求めていたから。ただ、良い本をそこで売ってしまい、仕入れができていない状態であることが深刻な問題。というのも、映画でもNYのブックセラー レベッカが「おじさんは悲観的」と話しますが、まさしく自分は”オールドスクール”側。本を売るのも買うのも顔をあわせないと嫌。海外に行けないからとネットで仕入れることができない」と言いつつも、 “上の世代は悲観的、でも私は楽観的よ。アイデアがいっぱいだから。”と映画の中で発言するレベッカについて、「彼女の考え方は凄く面白い。彼女は人気番組に出演して話題となり”古本アイドル”のような存在になった。日本にもそういう存在が出てきて、古本ブームがおきるといいですね(笑)」と話してくれました。そのほか映画に登場するブックセラーの素顔や、ブックセラーでないと気づきにくい映画の構成の巧みさなど、ディープな内容満載のトークとなった。

トークはアーカイブでご覧いただけるので、これから映画を観る方もぜひこのトークから深いブックセラーの世界に触れてみよう。

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