1年前の自分と

 「6割ぐらいかな、と思います。早い段階で形勢を損ねることは少なくなった。序盤から中盤のはじめの指し手の精度は上がっています」-。んー、そうですねえ…と前置きしながら丁寧に言葉を探す様子が目に浮かぶ▲インタビューに答えているのは将棋の18歳、藤井聡太二冠。今年の初めに経済紙の関連サイトで記事を見つけた。質問は〈1年前の自分と戦ったらどれぐらい勝てますか?〉▲よくある問いなのだが、藤井二冠がどう考えているかは確かに興味深い。年齢的には伸び盛りに思えるが、一方で、年齢不相応な完成度の高さで世間を驚かせてきたのだから。で、彼の答えは「6割」。まだまだ強くなっていますよ-と▲応用範囲の広そうな質問だ。何の分野でも、以前の自分に対する勝率が5割を超えそうなら、自身の成長や進化を実感できているということだし、逆ならば伸び悩みや停滞の証拠と考えなければならない▲昨年の今ごろ、政府のコロナ対応についてこんなふうに書いた。〈前例もなければ先も見えない。必要なのは「臨機応変」な対応だ、多少の方針転換も「朝令暮改」とは呼ぶまい。ただ、このところの首相は「右往左往」にしか見えない〉▲1年前よりも腕前を上げた、と政府は胸を張れるだろうか。近く3回目の緊急事態宣言。(智)


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