復興庁が公開即削除の〝トリチウム君〟ネットでたくましく生きていた!

タンクで埋め尽くされる福島第一原発

政府が福島第1原発の処理水の海洋放出を決めた中、復興庁が安全安心のPRに放射性物質トリチウムをキャラクター化したことで批判を浴び、平沢勝栄復興相が先日、謝罪に追い込まれた。キャラクターは削除されることになったが、既に脱原発派の新たな“シンボル”として、活動していた。

20日に記者会見した平沢氏は「(トリチウムを)漫画のようなもので表している。この部分にだけ関していえば、本当に申し訳ないなと心からおわび申し上げなければならない」と謝罪した。

問題となったのは、復興庁が処理水の海洋放出の風評払拭のために作成したチラシと動画に、トリチウムをキャラクター化したことだ。「原発の危険性を過小評価している」「福島の人たちをバカにしている」などと批判が殺到。13日に公開されたが、翌日には休止となっていた。

復興庁はトリチウムのキャラを削除、デザインを変更したうえで、改めてチラシと動画で安全PRに努めるという。

こうした経緯でトリチウムのキャラは幻になったと思いきや、どっこいネット上ではたくましく活動していた。既にツイッター上では、このキャラをアイコンにしたアカウントが10個以上確認されているのだ。

この現象には前例がある。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が1993年にプルトニウムの安全性を訴えるキャラクター「プルト君」を誕生させたが、国際的な批判を招いたため、間もなく姿を消した。

ところが2011年に起きた東日本大震災で、「プルトニウムを飲んでも安全」と訴えていたプルト君が「ブラックジョーク過ぎる」として、再び脚光を浴び、ネット上に氾濫した。そのうえ、Tシャツまで作成される人気となった。

著作権を持つ日本原子力研究開発機構は削除依頼に追われたが、いたちごっこは続き、ツイッターには「非公認BOTプルト君」が登場した。

「福島原発は原子力規制委員会っていう、かしこいひとたちに守られているから、とってもあんぜんなんだよ」「プルトニウムは食べても飲んでも吸っても大丈夫! 東京電力のお墨付きだよ」などと、今でも政府や原発関連ニュースを皮肉るツイートを投稿しており、4万人を超えるフォロワーを抱える人気アカウントになっている。

ほかにも、六ケ所げんねん企画株式会社が管理する六ケ所原燃PRセンター(青森)のキャラクター「げんきくん」を模倣したとみられるツイッター・アカウント「六ケ所村のげんき君―bоt」なるものも存在する。非公認プルト君は、この非公認げんき君と兄弟関係にあると明言している。

今回発生した、トリチウムのキャラクター騒動についても非公認プルト君は「まるでトリチウムしか流さないみたいなこと言ってるし…」とツイート。ネット上では「トリチウム君はプルト君の心強い弟になる」「トリチウム君もプルト君も放射能キャラとして、頑張ってほしい」とエールを送られており、政府や原子力関連事業者には目の上のタンコブとなる3兄弟が結成されることになりそうだ。

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