不登校 寄り添う場所に 森の保健室ヒュッゲ「励まし支え合って温かい空間に」 長崎・現川 小柳さん運営

「森の保健室 ヒュッゲ」の運営について話す(右から)小柳順子さん、長男壮平さん、塚本さん=長崎市、うつつ川・森のぶんこう

 豊かな自然に囲まれた長崎市現川町の「うつつ川・森のぶんこう」。毎週月曜に「森の保健室 ヒュッゲ」が開かれている。不登校の子どもやその保護者が自由に集える空間として昨年5月、近くに住む小柳順子さんが運営を始めた。
 「森のぶんこう」は2016年3月に閉校した市立高城台小現川分校の校舎や校庭を活用している。運営委員の塚本辰美さんら地元住民が管理し、さまざまな地域活性化イベントを開催している。
 ヒュッゲはデンマーク語で「居心地のいい空間」などの意味。月曜午前10時半~午後3時に開設している。
 約3年前の経験が開設の動機になった。高校生だった小柳さんの長男壮平さん(20)が突然、不登校に。友だちも多く、部活や勉強も頑張っていた。順子さんは「さまざまな事情が重なり通えなくなった。『通わない』ことを選択したわけではなく、『通えない』状況に陥った。学校から離れて過ごすことは多くの子や親にとって、痛みや不安を伴う歩み」と振り返る。
 そんなとき、気にかけ、寄り添い、話を聞き、時間を共有してくれる人たちがいた。「同じ思いをしている人の居場所になれば」とヒュッゲを開いた。昨春、開設に向け順子さんをサポートしたのが壮平さん。夏には留学のためオランダに渡った。ただ、コロナ禍で帰国を余儀なくされ、今は再び順子さんを手伝っている。
 19日午前。静かな校舎に壮平さんのギターの音が響いていた。正午ごろになると、利用者が次々と訪れた。小学校低学年から中学生まで。図書室で静かに本を読む子、走り回ったり、1週間ぶりの再会に会話を弾ませたりする子。保護者は近くで温かく見守る。
 中学生の息子と訪れた母親は「安心して過ごせているのが表情で分かる」。小学生の娘とほぼ毎週来ているという母親は「子どもだけでなく、親にとっても安心できる場所。話を共有できることで不安が減る。一時的に学校に通えるようになった時期にも私1人で来ていた」と言う。
 順子さんは「ここで一緒に過ごす人同士が励まし合い、支え合って温かい空間になっていると思う。子どもたちの心の土台みたいなものが育まれていけばうれしい」と柔らかな表情で語る。
 ホームページ(https://junkosoteta.wixsite.com/website)から問い合わせができる。

毎週月曜に「森の保健室 ヒュッゲ」が開かれているうつつ川・森のぶんこう

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