1959年生まれ。趣味は野球観戦で、春風亭昇太はマブダチ。
これってだれのことだと思いますか?
あんなオッサンや、こんなオッサン。みなさんの頭の中には、いろんなオッサンが浮かんでいるかと思います。
さて、正解は……
ユンケルでおなじみ佐藤製薬のマスコットキャラクター。オレンジのゾウこと「サトちゃん」でした!
かつては薬局のシンボルのような存在で、町を歩けば目にしたものですが、ドラッグストア全盛のいまとなっては置いてる店も少なくて…。昭和生まれの筆者としては寂しいかぎりです。
サトちゃんが住んでいる理由。
そんなわけでやってきたのは、新竪町通りにある『小西新薬堂』。
明治39年創業の老舗として、地域の健康を支えるこの薬局には、もうひとつの顔があります。
それがこのサトちゃん人形!
なんとその数500体以上。3つの棚に所狭しと並べられた姿は、もはやゲシュタルト崩壊するレベル。メインの薬剤や漢方よりも、断然こっちの方が目立っています。
なぜ、こんなにたくさんのサトちゃん人形が置いてあるんでしょうか。
ちょっと気になったので、4代目店主の馬場澄江さんに聞いてみました。
ーーさっそくですが、こんなにたくさんのサトちゃんをどこで手に入れたんですか?
馬場さん:これ、私の母が集めたんです。
ーーえっ!そうなんですか?
馬場さん:7年ほど前、母が入院したときに2階の倉庫を整理してたら、段ボール箱の中からたくさん出てきて。家族のだれも知らなかったから、びっくりしましたね。
ーーそ、それは驚きますね。
馬場さん:残念ながらその後、母は亡くなってしまったんですけど、私がお店を受け継ぐときに「おばあちゃんの供養になるはず」と息子たちが言ってくれて。それから飾るようになったんです。
ーー当時はどんな反響だったんですか?
馬場さん:商店街を歩く人たちが立ち止まってくれるようになって。おかげさまで新しいお客さんも増えました!
ーーなんか体調が悪くても、ハッピーな気分になりそうですよね。
馬場さん:そうそう。私もずっと一緒にいるので愛着が湧いてきて、つねにサトちゃんたちに癒されています。
ーーちなみに困ったことはありましたか?
馬場さん:たまにおもちゃ屋と間違われることくらいかな〜。あ、コロナ前までは、タイ人やインド人の観光客も多くて。会話にはちょっと苦労しました。
ーーそんなに遠くから!
馬場さん:あちらではゾウは神聖な動物とされていて、みなさん縁起をかつぎに来られているみたいですね。
ちなみにサトちゃんのデザインを手がけたのは、映画ポスターやキャラクターデザイン、絵本など、これまで数多くの作品を世に送り出してきた、グラフィック・デザイナーの土方重巳氏。
昭和レトロな作風には熱心なファンも多く、全国の美術館では展覧会なども催されています。土方氏が挿絵を描いた「王さまのアイスクリーム」は、子どもの頃によく読んだな〜。
それと、佐藤製薬のオフィシャルサイトには「サトちゃん検定」なるクイズも用意されているので、自信のある人はぜひチャレンジしてみてください!
薬剤師ならではの健康カレー。
そんな感じでサトちゃんを満喫していると、もうひとつ気になるものを発見しました。
「金澤 新竪町ビーフカレー」
現在、絶賛公開中の特集「ボクらのカレー」の取材やリサーチで、日々カレーを食べ歩いている筆者。これは見逃すわけにはいきません。
ーー馬場さんカレーも作ってるんですね!
馬場さん:そうなんです。もともとカレーを作るのが好きで、学生の頃はファンもいたんですよ。
ーーそうなんですか。
馬場さん:お店でも月1回、自家製カレーをふるまっていたんですけど、忙しくなってしまって。それならということでレトルトを作ったんです。
ーー植物発酵エキス入りって書いてありますね。
馬場さん:50種類の植物エキスで作った酵素が入っているんです。腸内環境を整えてくれるので、胃もたれもしにくいんですよ。
ーー7大アレルゲンも不使用で、さすが薬剤師って感じのカレーです。
馬場さん:お上手ですね。せっかくなので、ひとつずつ持って帰ってください♪
※実際にいただいたら、昔懐かしい昭和のカレーといった感じで、とても美味しかったです。
昭和世代には懐かしいサトちゃん人形が、ずらりと並んだ『小西新薬堂』。
取材中、道ゆくお客さんに「どうぞ見てってください」と気さくに声をかけたり、地域の高齢者の健康を気づかう馬場さんの姿を見て、自分の町にもこんな薬局があればいいのなぁ、と感じました。
大切にしまっていたサトちゃんが商店街と人をつなぐ姿を見て、天国のお母さんもきっと喜んでいるんじゃないでしょうか。
小西新薬堂
コニシシンヤクドウ
石川県金沢市新竪町3-48-2
TEL.076-221-5737
営業時間/10:00~18:00
定休日/月曜、日曜、祝日
駐車場/1台
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)