<社説>気候変動サミット 目標達成への行程示せ

 地球温暖化という世界共通の課題に対して、各国首脳が意思統一したことを歓迎する。22、23の両日開かれたバイデン米大統領主催の気候変動サミットで、温室効果ガス削減の新目標が米国や日本から示された。 今後は目標達成に向けた行程表を各国が具体的に示せるかが焦点になる。目標を机上の空論で終わらせないためにも、野心的な取り組みを各国政府に求める。

 温室効果ガスの「2050年ゼロ」は、いまや国際社会共通の目標である。

 その前段として、米国は30年に05年比で50~52%の削減を新たに表明した。菅義偉首相も、30年に13年度比で26%削減とする従来目標を引き上げ、削減率を「46%」にすると国際社会に誓った。

 一方、世界最大の温室効果ガス排出国である中国の習近平国家主席は、25年までに石炭の消費に対する管理や規制を強め、26~30年にかけ徐々に減らすとしている。

 サミットで「どの国でも一国では解決できない」と呼び掛けたバイデン氏に応じるように、習氏も「国際社会と共に地球環境の管理推進に努力したい」と述べた。

 経済摩擦などで対立する米中の2大国が歩調をそろえて共通の課題に取り組む決意を示したのは、国際社会にとって朗報といえる。

 しかし中国の温室効果ガス削減目標は他の先進国と比べると、若干の不満が残る。

 例えば温室効果ガスゼロの目標を60年に設定していることや、原子力発電の推進を国家目標に掲げたことだ。

 中国の国会に当たる全国人民代表大会で3月、習指導部は地球温暖化対策への対応の一つとして原子力発電を積極的に活用する方針を示した。

 太陽光や風力など再生可能エネルギーに注力する世界の潮流に反している。

 脱炭素へ向け、原子力から脱却できない傾向があるのは、日本も同様だ。

 政府は原子力発電を重要なベースロード電源と位置付けており、第5次エネルギー基本計画(18年)では原子力の電源構成比を20~22%とした。

 21年中に策定される第6次計画の素案では原子力や化石燃料などの合計で30~40%としている。電源構成に原子力がどの程度を占めるのか不透明な素案であり、明確に「脱原発」を示していない。

 3~4月にかけて、東海第2原発の運転を認めない判決、原子力規制委による柏崎刈羽原発の運転禁止命令が相次いだ。

 理由は異なるが原発の安全性が確立されていない証しであり、重要な電源と位置付けるのは無理がある。

 残念ながら気候変動サミットで、各国から従来の数値を上回る目標は掲げられたが、いずれも実現に向けた具体的な行程は示されていない。

 脱原発、脱炭素社会を可能にする真に野心的な方策を今こそ示すべきだ。

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