失意のソフトバンク・千賀 長期離脱を乗り越え“真のエース”へ

6日の試合で左足首をひねった千賀

失意の右腕が「本物のエース」になろうとしている。左足首の靱帯損傷で長期離脱を余儀なくされたソフトバンクのエース・千賀滉大投手(28)のことだ。今季初登板となった6日の日本ハム戦(札幌ドーム)で不運なケガに見舞われ、現在は福岡・筑後市のファーム施設でリハビリに励んでいる。

負傷後、松葉杖を手に初めて球団施設に姿を現したのは17日だった。柔和な表情で「お世話になります」と言い、ファーム施設のトレーナー陣やスタッフ、関係者のために飲み物など大量の差し入れをした。その姿に古株の球団関係者は「事故のようなケガ。初登板で不運な形で離脱した胸の内は想像できる。ケロっとした顔で、立派な振る舞いだった」と感心しきり。育成選手時代から千賀をよく知る森三軍監督も「地位に合った振る舞いができるようになった」と目を細めた。

最短でも全治3か月程度。今は地道に肩回りや上半身のトレーニングに取り組んでいる。面倒見のいいエースは“若手の見回り”にも積極的だ。今季から育成選手となった2017年ドラ1右腕の吉住を見つけると優しく声をかけた。「頑張ってるか。ダルさんもお前のことをずっと気にかけてるよ」。引退を一時決意していた吉住を野球界に引き留めたダルビッシュ(パドレス)と交流が深い千賀は、再起を誓う若鷹の現状を気にかけ勇気づけた。

戦列を離れた自身に代わって先発陣をけん引する盟友の石川には、LINEを送った。「思うことがあったら、話を聞くよ」。黒星先行で好投が報われない盟友の心情に寄り添った。

40年近くチームに関わる関係者は言う。「苦しい時、辛い時の言動を必ず誰かが見ている。みんなが手を差し伸べたいと思う人間になったら本物だ」

球団内で「(18年に引退した)摂津以来、真のエースはいない」と言われて久しかった鷹投。千賀に向けられる視線が、確かに変わってきた。

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