<金口木舌>持続可能な笑いの形

 「私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!」。お笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴さんがツイッターでつぶやいたコメントが話題となった

▼相手の見た目を悪く言うネタも披露してきたが、最近は外見に言及する笑いを観客が受け入れなくなっているという。福田さんはテレビ番組で「誰かが傷つくかもと心配しながらネタを披露するのって、なんやねんって思って」と語った

▼お笑いの世界では容姿で笑いを取れるのは強みの一つ。しかし現実の社会では、容姿にコンプレックスを抱く人も多い。笑わせるつもりが逆効果になることもある

▼数年前、お笑い芸人が性的少数者をあざ笑うようなキャラクターを演じて批判を受けた。以前は笑いを取れていたようだが、時代とともに受け手の意識は変わった

▼沖縄の喜劇女王・仲田幸子さんは、観客の喜ぶ顔が見たくて舞台に立ち続ける。開演前のあいさつで観客の様子を観察し、演目を変えることもあるという。一人一人の喜びに主眼を置くことで、長年にわたり高い評価を受ける

▼誰かをおとしめたり、あざ笑ったりせず、自らコミカルな役を演じて笑いを届けるのも仲田さんの魅力。容姿や性別、年齢などに関係なく、全ての人を楽しませてくれる。仲田さんが貫く姿こそ、時代が変わっても愛される、持続可能な笑いの形かもしれない。

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