パ・リーグの今季のトレンド? 各球団で不可欠となりつつある若手左腕たち

オリックス・宮城大弥(左)と楽天・早川隆久【写真:荒川祐史】

楽天の早川、ロッテの鈴木はルーキーながら開幕ローテで奮闘

2021年のパ・リーグで“若手左腕”がトレンドの1つとなりそうな気配がある。そこで、今季新たに台頭を見せている25歳以下の左腕投手たちの活躍ぶりと、その投手としての特徴を個別に紹介していきたい。各投手が現在、活躍している理由に迫るとともに、今後のチームを担うような存在へと成長してくれることに期待を寄せたい。(※成績は4月17日時点)

○早川隆久投手(楽天)

木更津総合高時代に甲子園で活躍し、早大での4年間で投手として大きく成長。4球団による競合を経て、2020年のドラフト1位で楽天に入団した。オープン戦でも大学球界屈指の好投手という前評判に違わぬ投球を見せ、プロ1年目から開幕ローテ入り。3月28日の日本ハム戦では6回無失点の好投を見せ、見事にプロ初先発初勝利をマークした。

4試合に登板した時点で防御率2.10と安定感は抜群で、奪三振を四球で割って求める、制球力を示す指標の「K/BB」も、優秀とされる水準(3.50)を遥かに上回る8.33を記録。速球、チェンジアップ、カーブ、スライダーといった多彩な球種を使い分け、ピンチで粘り強い投球を見せられる強心臓も持ち味だ。新人離れした投球からは、プロ1年目でのタイトル獲得への期待感すらも感じさせる勢いだ。

○鈴木昭汰投手(ロッテ)

法大からドラフト1位でロッテに入団した鈴木はオープン戦での2試合で防御率2.00と好投し、見事に開幕ローテの座を勝ち取る。プロ初登板となった3月28日のソフトバンク戦では5回を投げて2失点6奪三振ながら、6四球と制球に苦しんだ。だが、4月4日の日本ハム戦では7回無失点11奪三振2四球と修正してみせた。

4月11日の西武戦でも5回2失点7奪三振と、開幕から3試合全てで投球回を上回る奪三振を記録。3試合登板時点での奪三振率は12.71と、まさに新人離れした数字を残している。150キロを超える速球に加え、スライダー、シュート、チェンジアップといった変化球も空振りを奪える。打たせて取るタイプが多いロッテ投手陣にあって、異彩を放つスタイルは、チームにとっても大きな意味を持ってきそうだ。

2年目とは思えぬ安定感を見せているオリックスの19歳・宮城

○宮城大弥投手(オリックス)

沖縄の強豪・興南高でエースとして活躍し、2019年のドラフト1位でオリックスに入団。2020年は高卒ルーキーながら2軍で13試合に登板して6勝2敗、防御率2.72と活躍してウエスタン・リーグの最多勝にも輝いた。1軍でも3試合に先発してプロ初勝利も記録し、その才能の一端を示した。2年目の今季は開幕ローテ入りし、開幕2戦目の3月27日の西武戦で7回2失点(自責点1)と快投し、チームに今季初白星をもたらした。

その後も開幕から3試合続けてハイクオリティスタート(7回以上自責点2以下)を達成し、19歳の若さながら抜群の安定感を発揮している。速球と大きく曲がるスライダーに加えて、球速が遅く落差の大きなカーブ、同じくブレーキの利いたチェンジアップを投げ分ける投球は威力十分。球速の面でも変化の面でも、打者にとっては的が絞りづらい投手だ。4月23日に急性胃腸炎で抹消となったが、一気にリーグを代表する左の先発へと飛躍を果たしそうな気配だ。

○北浦竜次投手(日本ハム)

白鴎大足利高から2017年のドラフト5位で日本ハムに入団。プロ3年目の2020年には2軍で防御率1.74と安定した投球を続け、イースタン・リーグで最優秀防御率のタイトルを獲得した。鎌ケ谷での好投が認められ、同年8月14日には1軍で先発のチャンスも得たが、1アウトしか取れずに5失点(自責点4)でKO。1軍では3試合の登板で防御率16.20と結果を残せなかった。

今季はリリーフとして開幕1軍入りを果たすと、4点ビハインドの3月28日の楽天戦で2回無失点、7点ビハインドの4月2日のロッテ戦で3回無失点と、相手打線が勢いづいた状況からリリーフとして登板し、いずれも好投して火消しに成功した。1/3回で2失点を喫した4月6日のソフトバンク戦後に登録を抹消されたが、鍛えられた足腰が生み出すキレのある速球を武器に、再び1軍の舞台で成長を示せるかに注目だ。

育成契約への移行を経験した楽天の渡邊はサイドスロー転向が転機に

○田浦文丸投手(ソフトバンク)

秀岳館高時代に甲子園で3季連続となるベスト4入りを果たす活躍を見せ、2017年のドラフト5位でソフトバンクに入団。プロ2年目の2019年には1軍で8試合に登板して防御率4.50という数字を残したが、続く昨季は腰痛に悩まされたこともあり、1軍登板は一度もなし。2軍でも1試合のみの登板に終わっていた。

プロ4年目となった2021年は自身初となる開幕1軍入りを果たし、リリーフとして2回を無失点に抑えた4月11日の楽天戦でプロ初勝利をマーク。最大の武器である強烈なチェンジアップに加えて、速球、ツーシーム、チェンジアップといった他の球種の威力も増してきている。4月13日のオリックス戦では1アウトしか取れずに5失点と崩れたものの、高校時代から将来を嘱望された左腕が、ついに本格化の気配を感じさせている。

○渡邊佑樹投手(楽天)

横浜商大から2017年のドラフト4位で楽天に入団。左のリリーフとして期待されたが、1軍での登板は3年間で2019年の1試合のみにとどまり、昨季オフには育成契約に移行。しかし、そのタイミングでフォームをサイドスローに変更したことが転機になった。新たなスタイルをものにして春季キャンプでアピールに成功し、2021年の3月1日には早くも支配下登録への復帰を勝ち取った。

左のサイドハンドながら右打者に対する被打率が低いことも特徴で、単なるワンポイントにとどまらない存在感を放っている。ストレートとスライダーという対左打者で有効な球だけでなく、逆方向に曲がるシンカーも持ち合わせていることが、右打者に対しても好投を見せている理由の1つだ。今やブルペンの貴重なピースとなりつつある左腕は、このまま年間を通してフル回転の活躍を続けられるか。

この6人のほかにも、昨季以前から活躍を見せている若手左腕としては、それぞれ現在24歳のロッテの小島和哉投手、オリックスの田嶋大樹投手、ソフトバンクの笠谷俊介投手といった今季も開幕から先発として登板を重ねている面々が挙げられる。また、2018年に史上最年少で通算100セーブを達成した実績十分のクローザーである楽天の松井裕樹投手も、現時点で25歳と、年齢的にはまだ若手の範疇と言える。

今季序盤に台頭を見せている若き左腕たちは、この勢いのまま重要な戦力としてシーズンを戦い抜くすることができるだろうか。フレッシュな戦力の台頭は所属チームにとっても、リーグにとっても新風を吹き込む存在となるだけに、今後も今回取り上げた投手たちの、若さあふれる投球に期待したいところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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