【高校野球】一気に6キロ更新の150キロ計測… 水城の166センチ“小兵”右腕が目指す兄の背中

最速150キロを計測した水城・樫村佳歩【写真:川村虎大】

「強いチームに勝ちたい」敢えて常総学院を選ばず

高校野球の春季茨城県大会2回戦が25日に行われ、ノーブルホームスタジアム水戸では、水城が昨秋の県ベスト4・霞ヶ浦を相手に7回に6点を奪って6-2で逆転勝ちした。勝利の立役者はエース・樫村佳歩投手(3年)。常総学院で2016年に甲子園に出場した兄の雄大さんとは敢えて違う道に進んだ。

4兄弟の三男として生まれ、常に兄の背中を追ってきた。長男の雄大さんは常総学院だったが、次男の昌樹さんは水城に進学。夏の茨城予選でベスト8という結果を残した。樫村が選んだのは、常総学院ではなく水城。「強いチームに勝ちたい。次男が水城に行って甲子園に出場できなかったので、水城で甲子園を目指そうと思いました」。敢えて厳しい道での甲子園を目指した。

身長166センチにも関わらず、マウンドでは大きく見える。1週間前にフォームを変えた影響で、制球は安定しなかった。それでも追い込むと打者の内角をえぐるストレートで、霞ヶ浦打線から13個の三振を奪った。今までの最速は144キロだったが、球場設置のスピードガンでは150キロを計測した。

監督も認めるエースの自覚 マウンドでの笑顔の理由

試合中、時折笑顔を見せる樫村。その表情には、理由がある。「自分が辛そうな顔をすると仲間は声かけにくくなる。マウンドは1番高い。そこにいる自分が笑顔を見せることで、チームも守りやすくなる。だから、試合中に笑うことを大切にしています」。笑顔の裏には、仲間への配慮がある。

その想いに仲間も応えた。6点を取り逆転した直後の7回裏、霞ヶ浦の代打・山崎の投手強襲の当たりを三塁の関脩翔内野手(3年)が、ベアハンドで一塁へ送球。さらには、1死から西村の鋭い当たりも一塁・小川塁内野手(3年)がダイレクトで好捕。霞ヶ浦の反撃を味方が封じた。

関根茂彦監督も樫村の成長を感じている。「2年生の夏に背番号1を渡してから、2皮くらい剥けましたね。エースとしての自覚という部分がついてきた」。監督に言われずとも自分で考え、トレーニングする。その結果、入学した時から球速は10キロ以上アップした。

「将来はプロを目指したい。そのためにも、今よりも球速、投げ切る力を身につけないといけない」。166センチの右腕は、兄の背中を追って甲子園を目指す。そしてその先には、兄たちが成し遂げられなかった、プロへの道を見据えていた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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