小さな町が手掛けた評判の「やまそば」 土曜旅館 北海道そば巡り合い旅③

趣味でそば打ちをする人たちの中でひそかに人気となっているのが「やまそば」。ご存じでしたか?北海道でも有数の米どころとして知られる深川市は、そばの生産量が全国2位。

栽培面積が増えた背景には転作がありますが、米作りに向いていない山間部では古くから、そばが栽培されてきました。多度志(たどし)地区がその代表です。そばは水はけのよい土地を好むので、傾斜地の多い多度志地区は、そば栽培の適地。さらに昼夜の寒暖差も大きく、甘みの強いそばができます。米作りには向いていませんが、そばにとっては、絶好の場所なのです。
山間部という特徴と、品質の高いそばを作っているという思いを込めて、生産するそばに付けた名称が「やまそば」。今では市を挙げてやまそばの売り込みに力を入れています。

甘みの強い「やまそば」

そんな多度志地区ですが、全国有数の生産量にもかかわらず、2000年までは地元に製粉所はありませんでした。生産したそばは他の産地のそばとともに流通していて、「多度志」の名前は広まっていませんでした。そこで地元の農家が力を合わせて小さな製粉所「多度志そば工房」を設立しました。

地元の農家が作った「多度志そば工房」

以来、「多度志産」としてそばを出荷できるようになり、やまそばの名前とともに日本中のそば好きの間に広がりました。今も一人でそばを製粉する広中さんは、農家の思いを込めた良質なそばの実を大事にするため、石臼で少量の生産を続けています。

一人でそばを製粉する弘中さん
石臼での少量生産のため、業務用には出回らない

そのため業務用ではなく、そば愛好家のためのそば粉しか販売していません。
一方、多度志産のそば粉として出荷できるようになったことで、栽培農家も増えたといいます。有働正夫さんも20年前からそばを栽培。商品化を製粉所に任せることができるので、いいそばを作ることに集中できるようになったといいます。

良いそばを作ることに集中できると語る有働正夫さん

そばの実の甘皮を一緒に製粉することで、ほんのり黒みがかったやまそば。多度志の名前が広がったことで、多度志そば工房以外にも多度志産として扱う事業者が現れ、やまそばは深川市内の飲食店などで味わうことができます。

(2021年4月24日放送 テレビ北海道「北海道そば巡り合い旅」でご協力いただきました)

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