【MLB】投手・大谷翔平の“意外な落とし穴” 斎藤隆氏「持ち球は一級品であるがゆえ…」

エンゼルス・大谷翔平【写真:AP】

元メジャー右腕・斎藤隆氏が分析「投球の幅は一気に広がるでしょう」

今季から投打の“リアル二刀流”として本格始動したエンゼルス大谷翔平投手。右手中指にマメができた影響により、投手としては2試合での先発にとどまっているが、打者としては25日(日本時間26日)現在、19試合に出場し、打率.286、メジャートップタイの7本塁打、16打点3盗塁と活躍を続けている。右肘手術から完全復活して迎える今季、投手としての躍進も期待されるところ。そんな大谷に飛躍のヒントを送るのが、元メジャー右腕の斎藤隆氏だ。

ドジャースで守護神を任された斎藤氏は5球団で7シーズンを戦い、メジャー通算21勝15敗84セーブ39ホールド、防御率2.34の好成績を収めた。ブルペンの貴重な戦力として活躍し、引退後の2015年からはパドレスのフロントオフィスで球団編成について学んだ経験を持つ。

選手、そして球団首脳陣としての目も持つ斎藤氏は、今季の投手・大谷翔平について「ピッチャーとしての礎を築いてほしい」と期待。同時に、さらなる飛躍を遂げるために「ゴロアウトを取れる球種をもう1つ増やしたいところ」とアドバイスを送る。

「今年は打撃の調子がいいので、2way(二刀流)を求めていくなら、ここで投手としての基礎もしっかり作りたいところ。制球力を上げるべきなのか、マウンドでの修正能力を上げるべきなのか。いろいろとあるとは思いますが、もう1つゴロアウトが取れる球種があると楽になると思います。今すぐに習得するのは無理かもしれないけれど、この先も先発投手を続けるなら、いずれどこかのタイミングでチェンジアップのような遅いボールがあるといいですね」

現在、大谷が主に操る球種はフォーシーム、スライダー、カーブ、スプリットの5球種だ。斎藤氏は「今の持ち球はどれも一級品」と高く評価する一方で、「一級品であるがゆえに自分を苦しめている感じもあります」と話す。

「大谷選手の真っ直ぐは誰もが知る素晴らしさ。スプリットの完成度は言うまでもありません。スライダーは捕手が捕れないくらい鋭い変化をするし、カーブも高い位置から一気にギュッと落ちるイメージ。どの球種もすごいキレを持っています。だからこそ、球速も変化も緩い球種が1つ欲しいところ。スピードと変化に差が生まれれば、投球の幅は一気に広がるでしょう」

横浜、ドジャースなどで活躍した斎藤隆氏【写真:小林靖】

スライドステップで球速158キロ「そんな選手いないと思っていたら、いました」

今季の投手・大谷は2試合で8回2/3を投げ、許した安打は3本のみで被打率は.103と低い。その一方で12四死球、14奪三振という数字が物語る通り、四球または三振という独り相撲のピッチングに陥りがちだ。

「空振りか三振かというピッチングになると、疲れるし、球数もかさむ。だから、打たせてアウトにできる球があると、組み立てやすくなると思います。例えば、2ボールノーストライクという状況で、1球投げたらボテボテのゴロに打ち取れたり、ヒットにはなるかもしれないけどホームランにはならない球種。打者に『なんだ?』と思わせて、目線を変えさせる球種であれば、本人が投げやすいものでいいと思います。全ての球種が一級品であっても、20日(日本時間21日)のレンジャーズ戦のようなピッチングを見たら、監督やコーチはゴロアウトを取れる球を望むでしょうね」

大谷翔平という投手には、これまで誰も達し得なかった領域に足を踏み入れる可能性がある。そう信じているからこそ、送るエールでもある。

「クイックのスライドステップで投げて、158キロの球速が出る投手ですよ。そんな選手はいないと思っていたら、いました(笑)。僕なんてワインドアップで足を上げながらウワッと投げて159キロ出た時に『体が壊れるんじゃないか?』と思ったのに、クイックでピヤッと投げて158キロ。やっぱりすごい選手なんですよ。

去年まで『肩が細いな』と思っていましたが、体が大きくなって、肩にも厚みが増しました。肩がしっかり動いて怪我がなければ、肘にそれほど大きな負担が掛かったり、障害が出たりすることはないと思います。下半身も大きくなりましたよね。今季初先発の試合では、下半身がバチッと止まっていた。ブルペンで真っ直ぐを投げる姿を見ているだけで、ご飯3膳は食べられる。それくらいのピッチャーです」

斎藤氏は「この先、大谷翔平は彼にしか分からないレベルに行く」と予測する。大谷は26日(同27日)のレンジャーズ戦で、今季3度目の先発マウンドに上がる。投手としての幅を広げる過程で、先輩から送られたヒントは、きっと役に立つはずだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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