全敗

 「自民全敗」の活字が紙面に躍った25日投開票の衆参3選挙。ただし、収賄事件に関与した元農相の議員辞職に伴う北海道の補選は候補者を立てずに不戦敗。閣僚経験もある野党の有力議員が亡くなった長野はもともと分の悪い土地だ▲菅政権発足後初の国政選挙で痛い敗戦を喫した自民だが、この2敗は最初から織り込み済みだったとの説もある。ただ、残る1カ所、参院広島選挙区の再選挙は案外、強気のソロバンをはじいていたらしい▲「通常ならばダブルスコア」で自民側に軍配が上がる保守地盤だそうだ。だが、それが今回も読みの基本だったのなら厚かましいにも程がある。再選挙の理由は買収事件で有罪が確定した前議員の当選無効、“票をカネで買う”生々しくも古めかしい事件の構図は記憶に鮮明だ▲開票結果は惜敗率9割台の接戦だったが、負けは負けだ。投票率も大幅に低下、固いはずの支持層が投票所に背中を向け、政権に背中を向けて厳しい結果が突き付けられた▲今回の選挙、首相ら与党幹部の多くは選挙区の応援に出向かなかった。苦戦が伝えられ二の足を踏んだか、来てもらっても票にならないから、と地元が断ったか▲「国民の声に耳を傾け、結果を出していきたい」。神妙な表情で語る首相だが、失地回復の策が見当たらない。(智)

© 株式会社長崎新聞社