【天皇賞・春】アリストテレス〝イレギュラー〟が重なった前走7着 折り合いの心配は無用!

アリストテレスが今度はやってくれるはずだ

第163回天皇賞・春(5月2日=阪神芝外→内3200メートル)の最大のカギはアリストテレス(牡4・音無)の阪神大賞典1番人気7着惨敗をどう判断するか。「音無番」松浪大樹記者の見解は?

2週前の坂路(4ハロン53・7―12・9秒)に続き、1週前のウッド(6ハロン84・8―12・5秒)追いでも、アリストテレスの鞍上にはルメールがいた。聞けば「折り合い面を確かめておきたい」(音無調教師)と主戦からの要望があってのものだという。

もちろん、その背景にはスタート直後から力んでしまい、それがスタミナのロスにつながった阪神大賞典のレースぶりがある。操縦性の高さを武器に、堅実な成績を積み重ねてきたアリストテレスだけに、折り合いを欠いてしまった前走内容は7着という結果以上にショックが大きかった――。そんな筋書きにしてしまえば、今回も評価は微妙となるのだが、本当にそうなのだろうか?

本来なら断然1番人気で、この天皇賞・春を迎えるはずだったのに、前哨戦の阪神大賞典をうまくクリアできなかったことで、その前のアメリカJCC快勝どころか、あのコントレイルをクビ差まで追い詰めた菊花賞までなかったことにされそうな状況…。これを「おいしいと思うか?」と問われれば「相当においしい」と即答できる。

なぜなら阪神大賞典の敗戦はアリストテレスの弱点を露呈した一戦とは考えていないから。そう、あれはあくまで“イレギュラー”なのだ。

「状態に関して言うなら前走のほうが前々走よりもはるかに良かったんですよね。馬体の張りも、調教での動きも。それがあんなことになってしまって…」と苦笑する生野助手に「デキがいいところにテンから出して行ったから、逆にひっかかってしまったんじゃないかと思っているんだけど」と自身の感想を逆発信。すると「それはあるかもしれません。ちょっとしたことで進んで行けるくらいに馬が良くなっていましたから」と彼も同調してくれた。

つまりはアメリカJCCのイメージよりも状態がアップし過ぎてしまった、または成長し過ぎてしまったがゆえに反応が鋭くなり、それが折り合いを欠く原因になってしまったのではないか、という推論が成り立つ。それはテンションに何も問題が感じられない中間の調整などを見るにつけ、確信に近いものになっている。

「まあ、普通の馬場であったなら、前走も我慢はできたと思うんですけど、そこに道悪が重なってしまったのがツイてなかった。でも、普段から行きたがる面が出てきたわけではないですし、追い切りでは行きたがるどころか、物見をしていたくらいと聞いています。普通の馬場で、普通にゲートを出てくれれば、何の問題もないと思うんですけどね」と生野助手は当然のように折り合い面の心配を口にしていない。

実際、1週前追い切りを終えたルメールも「物見をしていたくらいでフルパワーは使っていない。本来は乗りやすい馬なのでコースは大丈夫。菊花賞ではゴールまで伸びてくれたし、冷静に走ることができたら距離も問題ありません」とノープロブレムの連続だった。

ちなみにルメールには天皇賞・春3連覇はもちろん、2018年秋レイデオロ→19年春フィエールマン→秋アーモンドアイ→20年春フィエールマン→秋アーモンドアイに続く天皇賞6連勝という記録がかかっていることもあって、本人自ら「モチベーションは高い」と発信しているほどだ。

“騎手で買え”と昔から言われる長距離戦で名手が二度の失敗をするとも思えない。ならば、菊花賞以来の絶好の買い時が来たと言えるのではないだろうか。

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