検証・佐世保市政 朝長市長4期目折り返し〈中〉 人口減少問題 移住促進も若者流出

人口減少が続く佐世保市。移住促進や水陸機動団の新編で移住者は一定増えたが、転出超過を解消できていない

 今年1月。総務省が公表した2020年の人口移動報告を見て佐世保市幹部らは一様に肩を落とした。同市は、人口流出の度合いを示す「転出超過」の人数が前年と比べて341人多い計1784人。全国市町村の順位ではワースト8位から4位へ後退した。特に深刻なのが若者の流出。とりわけ20~24歳の転出超過は計551人と突出し、3年連続で増加した。
 市長の朝長則男(72)は20年の3月定例市議会で「(転出超過の)要因を分析し、短期的、中長期的視点での政策が必要」と危機感を示していた。新型コロナウイルスの感染防止で密集の回避が求められるようになり、都市部から地方への移住も注目された。それだけに人口流出の増加は庁内にショックを与えた。
 これまで市は、観光振興や企業誘致などの重要施策「リーディングプロジェクト」をはじめとする総合的な政策で人口減少の問題に立ち向かうとしてきた。
 近年は都市部からの移住促進事業にも注力。17年にサポートプラザを開設し相談窓口を充実させた。プラザを介した移住者数は19年度まで右肩上がりで上昇。コロナ禍の20年度も218人を維持し、「暮らしやすい移住先として佐世保の認知度は高まっている」(市担当者)。
 朝長は「基地との共存共生」を掲げ、自衛隊の誘致も人口対策につながるとみる。18年には相浦地区に陸上自衛隊水陸機動団本部が新たに編成された。隊員約2400人が順次配置され、家族を含めて定住者の増加が期待されたが、転出超過を大きく改善するほどの効果は統計に表れなかった。
 佐世保自衛隊後援会会長を務める佐世保商工会議所会頭の金子卓也(77)は「隊員の多くは単身赴任。隊舎が足りず、家族を呼んで暮らせないという話も聞く」と指摘。効果を十分に発揮するため、「基地の街としての対応を考えてほしい」と求める。
 朝長はさらに「第3水陸機動連隊」の誘致を進める考え。一方で野党市議らは「基地依存の政策はその場しのぎ。長期的な展望がない」と批判する。
 機動団新編の効果について市は「人口流入に一定の効果があっているはず」とみる。だが、自衛隊側からデータが提供されないので検証ができないのが現状で、機動団の効果を大きく上回る規模で若者の人口流出が増えている可能性もある。市担当者は「まずは若い世代が市外へ出る現状分析を進めたい」とする。今後、有効な手だては打てるのか。対策は急を要する。
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