阪神・佐藤輝は「交流戦後にブレークする」 専門家が“真の覚醒”を確信するワケ

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

ゴールデングラブ賞7度の飯田哲也氏も絶賛「ケタ違い」

阪神は28日の中日戦(バンテリンドーム)に1-6で敗れ、2位・巨人とは1ゲーム差となった。開幕からの好調を支えてきたのが、盤石の投手陣と打ちまくる中軸。その中で、注目のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明も7本塁打をマークし、評判通りのパワーを見せている。リーグ最多の42三振も記録し、まさに「本塁打か三振か」という豪快さ。今でも十分すぎる存在感を放つが、さらなる覚醒を確信する声もある。

現役時代にヤクルト、楽天で外野手として活躍し、7度のゴールデングラブ賞を受賞した野球評論家・飯田哲也氏は、驚きを持って規格外のドラ1を評する。「ここ最近では見たことがない、ケタ違いだと思う」。オープン戦では6本塁打を放ち、ドラフト制が導入された1966年以降では史上初となるルーキー本塁打王となった佐藤。公式戦に入っても、4月9日のDeNA戦(横浜)では場外弾を放つなど、強烈なインパクトを残している。飯田氏も、その飛距離に注目する。

「佐藤がすごいのは、目一杯振っているわけではないのに、あれだけ飛ぶと言うこと。擦ったような打球でも、レフトスタンドまで届く。そんなに振っているように見えないのに、あれだけ飛ばすのは驚くしかありません」

驚愕の一発を放つ反面、三振数もハイペースで記録。それでも飯田氏は「三振の数は気にしなくていい」と問題視せず。内角攻めに苦しんで当初は打率2割前半だったが、ここにきてじわりと上昇してきた。

「まだ各チームとの対戦が一回りしたところで、初めての投手に、いろいろな変化球を投げられている状態。プロの投手ってすごいなと感じているところでしょう。これが慣れてきて、各投手の特徴がわかるようになると、三振の数も減ってくるはずです」

厳しい配球は強打者の宿命「ボール球を振り始めると打撃を崩す」

相手の厳しい配球も「内角を攻められるのは強打者の宿命。それも打てないからそこに投げられているわけではなく、意識させて外角の球を遠く感じさせるのが狙いなので、それほど気にしなくていい。現に佐藤は、インコースもうまく腕をたたんで打てる技術も持っています」と分析。今後に関しては「ストライクを打てば、どのコースを攻められても大丈夫。逆にボール球を振り始めると、打撃を崩すことになるのではないでしょうか」と見据える。

すでに大物ルーキーの片鱗を見せているものの、本当の評価はもう少し先になるという。

「夏場になると、ある程度データも揃ってくるので、打てるコースと打てないコースもはっきりしてくる。プロのピッチャーは、その弱点を攻めてくる。逆に佐藤の方も、相手の特徴がわかってくるので、そこは読み合いと言うか、駆け引きになる。技術はあるので、そこで落ちてくるような選手には、僕には見えないですね」

交流戦に入れば、セ・リーグとは違ったパワータイプの多いパの投手とも対戦する。それも見越して、飯田氏は佐藤の覚醒の時期を予言する。「交流戦が終わった後、夏場ぐらいにブレークするのではないでしょうか。山本由伸(オリックス)らの球を経験すれば、また一回り、大きく成長する気がします」。2005年以来のリーグ優勝へ向けてひた走るチームで、規格外のルーキーから目が離せない。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

© 株式会社Creative2