ハイパーカー時代最初の予選でトヨタがフロントロウ独占。可夢偉が7号車にポールもたらす/WECスパ

 従来のLMP1に代わる“ハイパーカー時代”の初年度を迎えた2021年シーズンのWEC世界耐久選手権。その開幕ラウンドであるスパ6時間レースの公式予選が4月30日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がWEC新時代最初のポールポジションを獲得した。

 今季のWECではトップクラスの車両規定を含め、さまざまなレギュレーション変更が行われているが、予選方式もその内のひとつだ。これまでシリーズは各車2名のドライバーが計測した、それぞれのベストタイムの平均ラップタイムを予選タイムとして採用し、決勝レースのスターティンググリッドを決定していた。

 しかし2021年シーズンはこれを簡素化。各車1名のドライバーによるアタックラップで順位を決定するという、シンプルで分かりやすい方式へと変更されている。

 そんな新たな予選は30日(金)現地時間18時10分から曇天のドライコンディション、気温9.1度、路面温度19.4度という状況のなか、まずはLMGTEプロ&LMGTEアマによって争われた。

 このセッションでは開始から3分が経過した直後、クリスチャン・リード駆る77号車ポルシェ911 RSR-19(デンプシー・プロトン・レーシング)が“ラディオン”で体勢を崩しタイヤバリアにクラッシュ。すぐさま赤旗が提示される。

 マシンの撤去、ならびにバリアの修復が行われ後、セッション再開となったがリスタートからまもなく、まるで直前のアクシデントのリプレイを見るかのような出来事がまたしてもラディオンで発生する。今度はチーム・プロジェクト1の56号車ポルシェ911 RSR-19がスピン状態でサイドからバリアに突っ込んだのだ。これでセッションは2度目の赤旗中断に。

 なお、幸いにも56号車をドライブしていたエギディオ・ペルフェッティと77号車のリードに怪我はなく、両名とも自力でマシンを降りサムアップで無事を知らせている。

 GTE予選は残り6分強で2度目のリスタートを迎えると、各車が続々とアタックを開始していく。そのなかで91号車ポルシェ911 RSR-19(ポルシェGTチーム/リヒャルト・リエツ)が基準タイムとなる2分13秒212を記録すると、これを僚友92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストレが2分11秒715という驚くべきタイムで上回る。
 
 このラップタイムはついぞ抜かれることなく、そのまま92号車がポールを獲得。91号車ポルシェも2分12秒370へとタイムを伸ばすが、間にAFコルセの52号車フェラーリ488 GTEエボが入ったため、GTEプロクラスはポルシェ、フェラーリ、ポルシェというトップ3オーダーとなっている。クラス4番手は51号車フェラーリ、スポット参戦の63号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)はクラス5番手だ。

ポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR-19
GTEプロクラスのポールポジションを獲得したケビン・エストレとニール・ジャニ(92号車ポルシェ911 RSR-19)
AFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evo
TFスポーツの33号車アストンマーティン・バンテージAMR

■LMP2カーがハイパーカークラスの牙城を崩す

 GTEアマクラスでは、ポール・ダラ・ラナ駆る98号車アストンマーティン・バンテージAMR(アストンマーティン・レーシング)が2分16秒881で暫定トップに立った。しかしこれをベン・キーティングが乗り込んだ33号車アストンマーティン・バンテージAMR(TFスポーツ)が2分14秒660というタイムで逆転し、ポールポジションを奪った。
 
 ダラ・ラナもその後タイムアップを果たしたが、再逆転は叶わずクラス2番手どまり。同3番手にはアンドリュー・ハリアントが搭乗した88号車ポルシェ911 RSR-19(デンプシー・プロトン・レーシング)が入っている。星野敏の777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)はタイム抹消によりノータイム扱いとなりクラス最後尾に終わった。

 GTEクラス予選の終了後に予定されていたハイパーカーとLMP2クラスの予選は、定刻より22分遅れでの開始となった。トヨタ勢は真っ先にアタックを行い、まずは可夢偉の7号車が2分00秒747というタイムを刻み暫定トップに。続けて中嶋一貴がステアリングを握る8号車トヨタがコントロールラインをくぐり2分01秒266をマーク。暫定2番手につける。

 ハイパーカークラスのライバルである36号車アルピーヌA480・ギブソンはフライングラップ後、一度ピットに戻ってからの再アタックに臨み、セッション最終盤になって元トヨタドライバーのニコラ・ラピエールのドライブで2分02秒652をマークした。

 この結果、7号車トヨタがハイパーカークラス最初のポールシッターとなるとともに、トヨタはWEC新時代最初の予選でワン・ツーを決め、決勝グリッドでのフロントロウを独占している。

 ハイパーカーとポールポジションを争う可能性も指摘されていたLMP2クラスの車両では、プロローグから好調を維持するユナイテッド・オートスポーツUSAの22号車オレカ07・ギブソンが2分02秒404をマークし、クラスポールを獲得した。
 
 フィリペ・アルバカーキが記録したこのタイムは、アルピーヌのそれを上回っており22号車オレカは総合3番手となった。クラス2番手/総合5番手はニック・デ・フリースがアタッカーを務めた26号車アウルス01・ギブソン(Gドライブ・レーシング)、総合6番手には29号車オレカ(レーシング・チーム・ネーデルランド)が入り、同車がLMP2プロ・アマ首位となっている。

アルピーヌ・エルフ・マットミュートの36号車アルピーヌA480・ギブソン
TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド
レーシング・チーム・ネーデルランドの29号車オレカ07・ギブソン
ユナイテッド・オートスポーツUSAの22号車オレカ07・ギブソン

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