五輪組織委の無神経な看護師500人確保要請 「1人出すのも無理」ツイッターデモの悲鳴届くか

「五輪開催」を進める菅首相(左)と組織委の橋本聖子会長

怒りが爆発寸前だ。東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対し、医療スタッフとして看護師500人の確保を要請したことを受け、愛知県医療介護福祉労働組合連合会(愛知県医労連)が4月28日からツイッター上でデモを開始。一時はトレンド入りも果たし、同30日時点で8000件以上の「いいね」が集まるなど、大きな反響が巻き起こっている。そんな中、愛知県医労連の関係者が取材に応じ、医療現場の実態を改めて赤裸々に語った。

やはり負担は大きいようだ。東京五輪・パラリンピック組織委員会は同30日、都内で新型コロナウイルス感染症対策の一環として発足した「専門家ラウンドテーブル」を開催。6月に判断する観客数の上限について、専門家から「観客を入れる以上は医療体制に負荷がかかるのは避けられない」との声が出たという。しかし、組織委側は「安全・安心な大会を行うために、何が必要かという観点からアドバイスをいただく場」と強調。改めて開催に向けて、準備を進めていく方針を示した。

とはいえ、先日報じた通り、一部の病院では医療崩壊の危機が迫っている。愛知県医労連の関係者は「現場の感覚からすると、本当に人が足りない。1人休むだけで現場が回らない状況。『五輪は患者の命を守ることよりも優先するべきものか』との意見も多く出ている。今はなかなか看護師で集まるのが難しいので、ツイッター上で意思表示をしたいと思った」とデモを実施した経緯を明かした。

コロナが流行してから1年が経過し、人手不足はより一層深刻化。通常は月4回の夜勤も、倍近くをこなさなければならないという。同関係者は「3月末は退職者が多いが、今年はコロナで『家族からやめてほしい』と言われたりして退職する人が増えている。4月は新人が入ったが、普段より入っていないので、退職した分を補充できていない。家族の反対で内定を辞退している人もいる」と惨状を訴えた。

まさしく医療現場は〝地獄〟そのもの。だからこそ「現場は五輪どころではない。1人出すのも無理ですという状況。日本看護協会も困っていると思う。500人もどこから集めるんだという話。(五輪は)コロナが落ち着いてからでいいんじゃないかなと思ってしまう。命がけでやらないといけないのだろうか。本当に500人の看護師を取られたら、現場で救える命が救えなくなってしまう」と声を大にしている。

この日、菅義偉首相(72)は看護師500人の確保について「現在休まれている人がたくさんいると聞いている。可能だ」との見方を示す一方で、反対意見には「そうした声は承知している。支障がないよう全力を尽くす」と語った。医療現場の声は、本当に届いているのだろうか…。真夏の祭典まで残り3か月を切った。このまま〝玉砕覚悟〟で五輪へ突き進むつもりなのか。

© 株式会社東京スポーツ新聞社