<美のチカラ>大戦の時代を生きた日本の画家たち「さまよえる絵筆」

東京都内にある美術館から魅力的な作品の数々を紹介するコーナー<美のチカラ>です。今回は板橋区立美術館で開かれている展覧会「さまよえる絵筆」を紹介します。

今回展示されているのは、第2次世界大戦の時代を生きた日本の前衛画家たちの作品およそ100点です。福沢一郎の作品『女』について、学芸員の弘中智子さんは「だんだん戦争が激しくなってきて、画家たちに対する監視の目も強まってきた時期、1937年の作品。自由に表現できない、追われていることがこの絵にも表れている」とひも解きます。また、吉井忠の作品『女(麦の穂を持つ女)』(1941年)は、吉井がレオナルド・ダ・ビンチに憧れ、ダ・ビンチが描いた女性像「モナリザ」の影響が大きく表れているといいます。弘中さんは「顔にも光が当たり、真っすぐ前を向いている。戦時中であっても希望を持ちたいという気持ちも描かれているように思う」と話します。絵の中の女性は、踏まれることで強く大きく育つという麦を手に持っています。この絵は新型コロナの影響が続く中で苦しむ現代の人々へのメッセージのようにも見えます。

「さまよえる絵筆 東京・京都 戦時下の前衛画家たち」
板橋区立美術館 2021年5月23日まで(予定)
※現在、緊急事態宣言のため臨時休館中

© TOKYO MX