田中将大、登板2試合で感じた豊富な引き出し 専門家が右腕に期待する“使命”とは

楽天・田中将大【写真:荒川祐史】

飯田哲也氏が登板2試合を分析、初戦は「力みを感じた」

8年ぶりに楽天に復帰した田中将大投手はここまで2試合に登板して1勝1敗、防御率3.27の成績を残している。ヤンキースで7年間のキャリアを積み日本に戻ってきた右腕について、現役時代にヤクルト、楽天で外野手として活躍し、引退後はソフトバンクなどでコーチを務めた野球評論家の飯田哲也氏に聞いた。

田中は開幕直前に右ふくらはぎのヒラメ筋損傷が判明して戦線離脱。復帰後初登板となった4月17日の日本ハム戦(東京ドーム)では5回3失点で敗戦投手となった。初回に中田翔に2ラン、2回に先頭打者の石井一成に一発を浴び、リードを許したまま、5回75球を投げて降板した。

飯田氏は「初戦に関しては、真っすぐで打者をねじ伏せるような投球にこだわっていたように見えました。8年ぶりの日本で緊張もあっただろうし、やらなければいけない、という気持ちもあったのでしょう。投げていて、力みのようなものをすごく感じました。故障したふくらはぎの不安もあったのかもしれませんが、とにかく本来の投球とは少し違うように見えましたね」

飯田氏が指摘したように、中田の本塁打はカウント1-2と追い込んだ後に154キロの真ん中高めの速球を打たれ、石井には2球直球を続け、高めに浮いた144キロをライトスタンドに運ばれた。それでも3回以降は無失点に抑えており、第2打席の中田に対しては全て変化球で空振り三振、石井もスライダーを詰まらせて併殺打に打ち取っている。

2戦目は「『この投球でいい』と手応えをつかんだのでは」

復帰後初の本拠地での登板となった24日の西武戦は、6回68球を投げて1失点。6イニング中4イニングを3者凡退で抑え、連打を許さず被安打3、1失点で日本通算100勝目となる復帰後初勝利をマークした。この日はスライダーとスプリットを中心にした配球で、18のアウトのうち三振は4つだった。

「1戦目と2戦目では投球内容が違っていました。変化球を低めに丁寧に投げて打たせて取るピッチング。結果もきっちり出たことで『この投球でいいんだ』という手応えをつかんだのではないでしょうか。2戦目で自分の投球がきっちりできていたのでこれからが楽しみです」と期待を寄せる。

多くの経験を積んだ右腕には様々な引出しがあるとも。「スタミナはあるし、実績も申し分ない。調子が万全でなくても、試合の中で今日はこの球種がいい、この球種はやめた方がいい、ということもわかってうまく投げられる。ゲームメイクは確実にできるし、やってくれると思います」とし、投球以外のことも期待している。

「かつてホークスでは工藤(公康、現監督)さんが若手だった城島を育てたように、田中も配球などを教えて太田らを育ててほしい。勉強することで投手からの信頼を得られるようになる。捕手が育てば強い、大人のチームになっていくと思います」。捕手を育てる役割も担える存在だと指摘した。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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