コロナ禍の就活 採用意欲、業界でばらつき 大学生との接触図る

オンラインで説明をする十八親和銀行の採用担当者(右)。採用活動に定着している(ジョブネットワークセンター提供

 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、来春入社の大学生の就職活動が本格化している。感染拡大の影響で採用に慎重になっている業種もあり、コロナ禍前は学生優位の「売り手市場」だった雰囲気が薄まりつつある。採用を続ける企業はオンラインを活用して積極的に学生との接触を図る。コロナ禍の就活の現状を追った。
 「今年も凍結です」。昨年度から初めて大学生の採用に乗り出す予定だった長崎市のホテルの担当者は肩を落とす。1年だけ見送るつもりが状況は好転せず、開始のめどは立っていない。
 観光業は新型コロナの影響を大きく受けた業種の一つ。県観光動向調査によると2020年の主要宿泊施設の延べ宿泊客数は321万5千人で19年に比べ39.3%も減少した。07年の調査開始以来、最も落ち込み幅が大きかった。別の宿泊施設も採用計画を一転し、白紙の状態という。
 リクルート就職みらい研究所の増本全所長は「コロナの影響で採用意欲は業界によってばらつきがあり、かつてほどの“売り手”ではない」とみる。長崎市の製造業の会社は例年10~15人採用していたが今年は5人以下に抑える見通しで「過去10年で最も少ない」。別の製造業の会社は、例年10人弱採用するが今年はゼロ。大卒採用を始めて10年ほどになるが、初めての事態という。
 一方、採用に前向きな企業も。背景には地方の中小企業ならではの事情がある。液化石油ガス(LPG)販売大手のチョープロ(西彼長与町)は「これまで学生の目が大企業に向いていた。大企業が採用を控えている今、採用しておきたい」。大光食品(島原市)も「Uターン就職を希望する学生が増えている印象」と語り、採用人数を縮小しない予定だ。
 企業の採用活動は、対面とオンラインを併用。昨年緊急的に広がったオンラインは定着し、引き続き用いる企業は多い。九州教具(大村市)は「優秀な人材を逃したくない」と説明会や県外学生の面接で活用。十八親和銀行(長崎市)は昨年に比べて説明会参加者が約200人、面接は約100人増え「金融業に興味がなかった人も気軽に参加してくれ、これまで接点がなかった学生を取り込めている」と手応えを語る。
 一方、学生は新型コロナ前に比べて難しい就活になっている。県立大の女子学生(21)は「求人を取り消した企業もあり、選択肢が狭まっていると感じる」と嘆く。長崎国際大(佐世保市)のキャリアセンターは、複数の業種を見るよう学生に指導。安定志向の強まりなのか、公務員を目指す学生が増えているという。
 リクルート就職みらい研究所の増本所長は「新型コロナ禍で学生同士で情報交換する機会が減っている。主体的に情報を収集し、準備をできるかが重要だ」と指摘する。

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