レッドブル・ホンダ密着:トラックリミット違反により、獲れるはずだったポールを逃した予選。終盤の渋滞も影響か

 第3戦ポルトガルGPの予選後、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は近寄るテレビカメラを遮るなど、珍しく怒りを露わにしていた。そこには、獲れるはずだったポールポジションを逃したことへの大きな失望感がにじみ出ていた。

 今回の予選で、フェルスタッペンがポールポジションを逃した理由は、3つ考えられる。

 ひとつは、Q3の最後のアタックでメルセデスがミディアムタイヤを選択したのに対して、レッドブル・ホンダはソフトタイヤのままだったことだ。じつはこのタイヤ戦略は、昨年のポルトガルGPでもメルセデスが行っていた。理由はアルガルベ・サーキット特有のウォームアップの悪さだ。

2021年F1第3戦ポルトガルGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 昨年のグランプリ直前に再舗装したアルガルベ・サーキットは、滑りやすいことで有名だ。そこで多くのチーム、ドライバーが通常1周しか行わないアウトラップを2周行って、タイヤに熱を入れていた。しかし、コンパウンドが軟らかいソフトタイヤは1周は速いが、走る距離が長くなるほどラップタイムが落ちるというデメリットがある。

 しかも、Q2でミディアムを装着してルイス・ハミルトン(メルセデス)が1分17秒台をマークしていたメルセデスは、Q3の1回目のアタックでハミルトンがソフトタイヤで1分18秒355にとどまると、最後のアタックでミディアムタイヤを選択するというのは当然の決定だった。

 逆にQ2でメルセデスと同じようにミディアムタイヤを選択したレッドブル・ホンダはフェルスタッペンが1分18秒650で、セルジオ・ペレスも1分18秒845と、必ずしもミディアムタイヤのほうが速いという状況にはなかった。実際、ミディアムタイヤに変更したメルセデスの2台はいずれもソフトタイヤで記録した自己ベストを更新できなかったので、レッドブル・ホンダがタイヤ戦略でポールポジションを逃したわけではなかっただろうと考える。

2021年F1第3戦ポルトガルGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)

 ふたつ目の理由として考えられるのは、フェルスタッペンが渋滞の影響を受けたことだ。最後のアタックに入ったとき、フェルスタッペンの前にはランド・ノリス(マクラーレン)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)がいた。マクラーレンのエンジニアはノリスに対して、「フェルスタッペンはまだタイムを記録していないから、彼に好きなようにさせるな」と無線を送っていた。もちろん、アタックを妨害すれば、ペナルティになる。そこでマクラーレンは妨害はせず、かつスリップストリームを使わせないようにして、ノリスを走らせていた可能性はある。

 ノリスより影響を受けたのは、もう1台のベッテル。フェルスタッペンが14コーナーに差し掛かった時、前を走行していたベッテルは一瞬フェルスタッペンとラインが交錯しそうになった。予選後、フェルスタッペンが無線で不満をぶちまけていたのは、このことだったのではないか。

 3つ目の要因がQ3の1回目のアタックで、フェルスタッペンがトラックリミットを犯して、タイムを抹消されたことだ。ターン4で縁石を飛び出したフェルスタッペンがそのラップで刻んだタイムは1分18秒209。これは自身2回目のアタックで記録した1分18秒746よりコンマ5秒速かっただけでなく、ポールポジションタイムの1分18秒348よりも速く、もちろん、ハミルトンの1分18秒355をしのぐタイムだった。

 そのスーパーラップをトラックリミットで失った代償は、フェルスタッペンが思っていたよりも、結果的に大きなものとなってしまったようだ。

2021年F1第3戦ポルトガルGP 予選後の会見に出席したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第3戦ポルトガルGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第3戦ポルトガルGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

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