夜遊びがなかなかできないこの時節に登場した、夜の匂いを濃厚に湛えた腕時計。
世界的なDJ・音楽プロデューサーの スティーヴ・アオキ とローマのハイジュエリーブランド ブルガリのコラボウォッチ「 ブルガリ アルミニウム スティーヴ・アオキ 限定モデル 」がそれ 。 世界で1000本 、 日本市場向けの割当はうち200本 の限定商品だ。
消費税10%込価格 357,500円
[Steve Aoki | Aoki Foundation]
[BVLGARI ALUMINIUM ウォッチ 103539 | Bvlgari]
スティーヴ・アオキとのコラボウォッチ
コアな音楽ファン、それもクラブカルチャーやEDMに詳しい人なら必ずや知っているであろう世界的DJのスティーヴ・アオキ。(ちなみに実は僕はあんまりよく知らなかった。もはやクラブなんて行かないし、EDM方面には疎かったことを告白します)
音楽プロデューサーとしてBTSなどをフィーチャーしていることでも知られている彼は1977年生まれ。米国で大成功した(鉄板焼のBENIHANAで有名な)実業家ロッキー青木の息子として生まれたが( モデルで女優のデヴォン青木 は異母妹)、日本語はまったく話せずピュアな米国籍日系2世としてアメリカに根を下ろしている。
[スティーヴ・アオキ | ソニーミュージックオフィシャルサイト]
パーティーDJとして、キレたパフォーマンスで知られる彼は(盛り上がってくると踊りまくるクラブ客たちにケーキを投げつけるのだそうだ。酔客たちはそれを喜んで受けるそうだが、僕ならちょっと勘弁だ)夜の世界では世界を股にかける有名人。
その彼のイメージを反映し、クラブシーンに映える工夫を施した限定ウォッチ「 ブルガリ アルミニウム スティーヴ・アオキ 限定モデル 」がブルガリから発売された。
文字盤(ダイアル)全体に 蓄光塗料のスーパールミノバ を施すことによって、暗くなると発光して、 スティーヴ・アオキのシグネチャーが浮き出す 仕掛けになっている。
(逆に言えば、昼間 たっぷり光を浴びていないと充分光らない。つまり、日中は陽の光の下でガンガン働け!ということだ)
また、時計ケースの背面にはSTEVE AOKIロゴが刻まれ、コラボウォッチであることを力強く表明している。
日中は穏やかで優しい顔、夜になると猛々しくパーティー好きの派手な一面を剥き出しにする。一本で二つの顔を使い分ける、仕事も遊びも全力投球したいオトナ向けの一本だ。
ブルガリ アルミニウムについて
ベースとなるブルガリのアルミニウム(Bulgari Aluminum)という時計は、1998年に登場したモデルの復刻版。スポーツ性を訴求した軽快なモデルであり、アルミニウム自体には夜のイメージやパーティーライクな趣きはそれほどないが、今回の限定モデルはスティーヴ・アオキとのコラボにより巧みに夜っぽさが加えられたと言えるだろう。
もともとブルガリ アルミニウムという時計は、高級時計ではほとんど使われることのないアルミニウムにラバーという異素材を組み合わせて織り上げた黒と白のクールなデザインと、ハイブランドの商品としてはリーズナブルな価格がウケて、世界中で大ヒットした製品だ。
ラグジュアリーブランドのブルガリには、 オクトシリーズのような高級路線 もあるが、アルミニウムはその価格帯からブルガリのエントリーモデルと位置付けられる。
ラバーやアルミといった汎用的な素材を使っても高級時計を作れる、という、デザインの妙やブランディングの冴えを見せつけることによって、ブルガリは時計メーカーとしての知名度を上げ、さらにラグジュアリースポーツウォッチという新しいカテゴリーを切り拓くことになったのだ。
ありふれた素材を纏いながらもお洒落に見える、それはセンスの問題だし、金をかければオシャレに見えるわけではない。ラグジュアリーとはセンスだ、とブルガリはハイブランドである自らのアイデンティティを壊しかねない冒険をやってみせた、と僕は思う。
それはまるで、その辺にあるガラクタを組み合わせてアートにしてしまうバスキアやバンクシーのような手腕のようだ(アルミニウムに使われた素材はありふれたものだろうが厳選されて選ばれたモノであって、すぐ手に入るそこいらのガラクタとはわけが違うのはいうまでもないが)。
なにより、他の時計と記憶が混濁してしまうことがない、一目見てコレとわかる秀逸なデザインはそれなりのコストを投資して惜しくないユニークさだと思う。それこそ、911にも通じる、最大の長所だろう。
その後 アルミニウムはブルガリのウォッチコレクションからは型落ちしていたが、2020年9月に突如復活。
初代はクォーツだったムーブメント(時計を動かす基盤。クルマで言えばエンジンにあたる)は自動巻(Cal.B77=Selitta SW300-1ベースのブルガリ用型番という、比較的凡庸なキャリバーを使用)に変更され、全体として強度は向上されているが、基本デザインは昔のまま。かつては最大38mmだったケース直径は40mmになっているが、変わったなあ、と思うほどの変更はない。
実は僕は当時住んでいたマレーシアの首都KL(クアラルンプール)から東京に戻る飛行機の機内で初代のアルミニウムに一目惚れして、これを購入した。つまりクォーツ版のアルミニウムを一本持っている。
だから、今回限定モデルと、初代機を直接比較することができるのだ。
ちなみにムーブメントの設計・製造から時計自体の製造まで一気通貫で行えるメーカーを マニファクチュール というが、ブルガリもその一つだ。
スティーヴ・アオキ コラボモデルのスペック
復活したアルミニウムは、ざっくり通常の3針モデルが文字盤=ダイアルのカラーが白と黒の2種類と、ダイアルのベースカラーが白のクロノグラフとなっているが、今回リリースされた ブルガリ アルミニウム スティーヴ・アオキ 限定モデル は、ダイアルカラー白の3針モデルをベースとしている。
(ラバーのカラーをブルーとした、 イタリア空軍とのコラボモデル「トリコロール (本来ならばトリコローレと表記すべきじゃないのかなあ、トリコロールだとフランス国旗の意味になるんじゃないか?)」も発表されているように、今後このアルミニウムはさまざまなコラボ用のプラットフォームとして活用される可能性がある)
なので、見た目は別として基本的なスペックは、ベースとなるアルミニウムと同じだ。
【時計詳細】
- 直径 (mm)
40 - ケースシェイプ
ラウンド - 機能
時・分・秒・日 - ムーブメントタイプ
自動巻き・B77 キャリバー
(Selitta SW300-1ベース) - パワーリザーブ
42 hours - 振動数
28,800 VpH (4Hz) - 防水性
100 m - ストラップの素材
ラバー - ストラップの色
ブラック - バックル
フックバックル - 素材
アルミニウムチタン - カラー
ブラック
こうしてみると、性能的には極々平凡な自動巻時計と言える。ムーブメントに採用されているB77キャリバーは車で言えばリッターカーなどの大衆車に載せられるエンジンのようなもので、およそエキサイティングなモノではない。
パワーリザーブ (非クォーツ、つまりゼンマイで動く 自動巻か手巻きの機械式時計で、一度完全にゼンマイを巻き上げた状態から放置して時計が止まるまでの駆動時間)42時間という数値も、高級機械式時計としては短い(2日保たない、てことだからね)。
ただ、自動巻時計の場合、腕につけている間は原則としてゼンマイが巻かれ続けるわけだから、普段使いするならば42時間は必要充分であるといえる。スマホなどのITガジェットと違い、ヘビーユースしたところでパワーリザーブが短くなることもないわけだし。
(スマホならば、寝ている間に充電するから、触り続けていてもバッテリーが1日保ってくれればそれで問題なく、それ以上延びなくても日常生活に支障はなくなる)
前述のように、それほど高価な素材を使わず、性能自体も平凡な製品を、そこまで高くはないとはいえ、それなりの価格帯(少なくともハイブランドの商品としてラインナップできるプライシング)で販売して買い手を納得させることができるのは、ブルガリの高いデザイン力、ひいてはブランディングの実力の証明であると僕は思う。
腕時計のことをそこそこ理解してくると、クォーツより機械式を尊ぶようになるが、正直ムーブメントの違いなんてコアなマニアくらいしか気にしないのが実際のところ。
スポーツカーはFRかミッドシップでなきゃ!(911はRR=リアエンジンリアドライブ だけど、あれは例外ww)と、言い張るクルマファン(→僕もその1人。FFベースのアウディTTに乗っている僕は、まあ四輪駆動だから、と苦しい言い訳を独り呟いている)と同じで、たいていの人には正直どうでもいい。
とはいえ、Apple Watchじゃダメなんだよ、と頑なに自分好みの一本にこだわる者のために?さまざまななブランドが存在しているのである。
スペックじゃないんだ、俺(私)の手首を飾るストーリーを持つ存在は、性能やできることの広がりとは関係がないんだ。そう思える人がいるうちは、高級時計の市場は消えることはないんだろうと思う。
(その意味で、腕時計とクルマは似ているなと思うのだが、腕時計はクォーツに一時席捲されたものの、機械式ムーブメントのブランディングに成功したけど、クルマはSDGs的にエンジン→モーター(EV)のパワーシフトには抵抗できないだろうなあ)
新旧アルミニウムの比較?アルバム
1998年末に手に入れた初代機はクォーツ。今回の復活版は自動巻。だけど、やはり見た目にはほとんど変わりがない。
今回の限定モデルは、スティーヴ・アオキモデルであることを主張するメタルボックス(アルミ製だろうw)に収められている分、多少の特別感は与えられているが、このボックスに収めることはもうない(僕の場合、機械式時計もクォーツ時計も全部ワインダーボックスに仕舞うことにしている)から、使い始めてしまえば、もう関係がない。
[BVLGARI ALUMINIUM ウォッチ スティーヴ・アオキ 限定モデル【昼間の顔編】 (9)]
(スーパールミノバで輝く“夜の顔”の写真を撮りたい)
夜の匂いを身に纏いながら、解放される瞬間を待て
さて。
このスティーヴ・アオキ 限定モデルという時計は、クラブDJとしてキレたパフォーマンスを見せる男のイメージを重ね合わせた、実に夜の匂いがする時計である。ありふれた素材なのにクールに仕上げられたその見た目は、まるで普段着をとびきりのセンスと工夫だけでパーティーウェアに変貌させたかのような、ストリート感あふれる驚きのカッコ良さだ。
ダイアルに大胆に刻まれたシグネチャーは日中の光の中ではほとんど見えないが、ひとたび暗闇に身を潜めれば鈍い光と共にそのやんちゃで奔放な本性を浮かび上がらせる。
昼間のオフィスでの軽やかで爽やかな出立ちが、夜の空気に触れたとたん鮮やかに夜遊びを楽しむ世馴れたプレイボーイへと変化するのだ。
(2021年5月現在)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行、そして緊急事態宣言などによる外出自粛モードにより、すっかり夜遊びから遠ざかってしまった人も多かろうと思う。
クラブ通いなんて、いわゆる三密(密閉、密集、密接、だったかな)をコンプリートしてしまうわけだし、酒飲んで音楽に酔いしれて暴れる、そんな若者ならではの遊びの文化を世の中は全力で否定してかかっているのが昨今の風潮だ。
実際には、夜を楽しむのは若者ばかりではなく、昼間は分別を弁えたような顔をしているいい大人たちが、夜の背徳感を満喫しながらフラフラと街に繰り出していたはずなのだが。
そんな 夜の街や空気を味わう愉しさと自由を取り戻せる日を夢に見ながら、当分は生きていくほかない。それは分かってる。(“世界のパーティー野郎”たちはどうやって生き延びていくのだろうか?)
そういう オトナたちの手首を飾る時計。夜の暗闇に一条の閃光を放つような一本。それがこのブルガリ アルミニウム スティーヴ・アオキ 限定モデル。簡単に夜の街を忘れてしまう、聞き分けのいい人々のための時計じゃない。
自粛という名の鎖に繋がれていても、夜の匂いに惹かれて蠢く夜光虫のように、微かな光を纏いながら飢えた獣の気配を湛えて、その時が来るのをひたすら待とうではないか。ブルガリ アルミニウム スティーヴ・アオキ 限定モデルをいま手首に巻くということは、そういう覚悟の表明なのである。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。