【天皇賞・春】ワールドプレミア復活V 今後に進むべき道は?

19年菊花賞以来の勝利となったワールドプレミア

京都競馬場の改修工事のため、舞台を阪神競馬場に移して行われた2日のGⅠ天皇賞・春(芝3200メートル)。1周目=外回り、2周目=内回りというイレギュラーなステイヤー決戦は、一昨年の菊花賞馬ワールドプレミア(牡5・友道)に凱歌が上がった。戦前の下馬評は混戦だったが、終わってみれば上位人気4頭が1~4着に収まる堅い決着。レースの上がり3ハロン37秒4という究極のスタミナ決戦を制した勝ち馬が今後、進むべき道とは?

ほぼほぼパーフェクトなレース内容だった。福永が指摘したわずかなマイナスポイントは「理想はスタートを上手に出し、ポジションを取る競馬。だが、スタートがひと息でそれができなかった」ことだが、それはあくまで理想形をイメージした上での反省点に過ぎない。

最初の5ハロン通過が59秒8というよどみないペース。前が飛ばして早い段階でワールドプレミアの前後にスペースが生まれた。すぐ前にはアリストテレス、さらにその前にディープボンド。有力馬を見ながら進める絶好位でありながら、同時に他馬が周囲に密集しない〝リラックススポット〟に収まった。最高のポジショニングだった。

「それは幸運でしたね。①枠ということもあってリカバリーがスムーズでしたし、自分の馬のリズムを考えた競馬ができました」(福永)。

押し上げてきたウインマリリンをけん制しつつ、徐々に外へと進路を向けた2周目3コーナー過ぎの攻防に関しては「直線まで内を通り、最後に割ってくる形が理想でした。しかし、それでは外からフタをされてしまう危険性もある。有力馬が前にいましたし、その外へと出すことにしました」と〝ベスト〟ではなく〝ベター〟を選択。だが、加速に時間がかかるものの、トップスピードの持続には定評があるワールドプレミアにとって、福永が取った策こそがベストチョイス。この勝利で史上4人目(現役3人目)となるJRA重賞通算150Vを達成した騎手の腕も感じた一戦だった。

もっとも、当の本人によればコース難易度は「坂の上り下りが2回の京都のほうが上」。豊富な経験を積んだトップジョッキーの言葉を読めば、阪神の天皇賞・春は能力重視でOKということかもしれない。

では、能力最上位を証明した主役=馬に話を移そう。「間に合うかどうか微妙だった」(友道調教師)日経賞(3着)をひと叩きし、過去にない仕上がりを誇った今回のワールドプレミア。同馬がマークした上がり3ハロンは出走馬唯一の36秒台(36秒7)。近年にないほどタフな天皇賞・春を制したパートナーを福永は「立派なステイヤー」と称し、友道調教師は「長距離では崩れていない。どこも心配することもなく使えるようになってきたのは大きい」と胸を張った。

問題は今後に進むべき道だ。まずはノーザンファームしがらき(滋賀県)へ放牧に出し、次走を決定するというが…。距離不足のレースばかりが揃う日本よりも、タフな馬場&距離が待つ「世界戦」に目を向けたほうが、より最強ステイヤーの真価を発揮できるのではないだろうか。

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