「阿蘇」世界遺産へ好機? 文化審が国内候補の充実答申 “ライバル”も評価

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世界文化遺産への登録を目指す「阿蘇カルデラ」。野焼きや採草、放牧で維持する草原には、ハナシノブなど希少な植物が群生、豊富な地下水も湧き出す。火山信仰や農耕祭事など多様な文化も生み出した(写真はコラージュ)

 国の文化審議会は3月末、世界文化遺産の国内候補に当たる「暫定リスト」の充実を文部科学相に答申した。「阿蘇カルデラ」の登録を目指す地元自治体関係者は、「絶好の好機」と期待。他の候補地から「阿蘇」に対する高評価も聞かれる中、熊本県などはリスト入りに向け、国に提出する提案書の内容充実などを図る。

 4月20日、阿蘇世界文化遺産登録推進協議会(県と阿蘇郡市7市町村で構成)会長の蒲島郁夫知事と、佐藤義興阿蘇市長ら3市町長が上京。萩生田光一文科相に「阿蘇」の暫定リスト追加を求める要望書を提出した。

 ◆手応え

 要望書では、世界最大級のカルデラ内で、人々が野焼きや放牧、カヤ採取などにより千年以上も草原を利用・維持してきたことを強調。火山信仰や農耕祭事などにも触れ、「世界文化遺産にふさわしい、顕著で普遍的な価値を有している」とアピールした。要望に同行した県文化企画・世界遺産推進課の担当者は「大臣に有力候補として認識してもらっている感触はある」と手応えを話す。

 「阿蘇」の世界文化遺産登録に向けた動きは2007年、文化庁の公募に立候補したことに始まる。暫定リスト入りは逃したが、「四国遍路」(四国4県)「天橋立」(京都府)など他の四つとともに、次点の中で最上位の「カテゴリーⅠa」に認定された。

 ◆一歩先

 「文化財の確実な保護」「国際的な価値の証明」─。同推進協はリスト入りを逃して以降、文化審議会から指摘された課題の克服に取り組んできた。

 17年、国は南小国町や南阿蘇村の草地や森林など約4千ヘクタールを重要文化的景観に選定。20年には阿蘇市の約5千ヘクタールを追加し、開発に制限をかけた。国際的な価値の証明では本年度、世界遺産登録審査に関わる海外の研究者を招き、意見を求める場をつくる予定だ。

 着実な取り組みは“ライバル”からも高評価を得ている。四国初の世界遺産登録を目指す「四国遍路」の推進協事務局(香川県文化振興課)は、阿蘇について「資産の範囲がコンパクトで、国の重要文化的景観にも選定されている」。国宝・松本城の登録を狙う、長野県松本市文化振興課は「阿蘇のカルデラは今までの世界遺産にないタイプ。城は既にあるので、一歩も二歩も先に行かれている印象」と持ち上げる。

 ◆狭き門

 文化審議会は今後のスケジュールについて答申で「21年度は暫定リスト見直しの具体的手順を定め、議論を進める」としている。

 文化庁文化資源活用課は「手順がまとまり、その時点で審査の準備が整っている候補があれば、本年度内のリスト改定の可能性はある」と説明。ただ、世界遺産の審査は年々厳しさを増しており、国内選考は狭き門になることも予想される。

 阿蘇世界文化遺産登録推進協は、昨年3月に国へ提出した提案書の内容をさらに充実させ、本年度中に再提出する構えだ。資産の構成範囲の設定を進め、学術的な裏付けを強化し、国の文化的景観の対象地域を広げることも視野に入れる。

 佐藤市長は「前回の公募から10年以上かけて準備してきた。提案書の内容をさらに深めたい」。県文化企画・世界遺産推進課は「国との連携を密にしてリスト改定のスケジュールを把握し、最良のタイミングで提案書を出したい」とシナリオを描く。(植山茂)