<いまを生きる 長崎コロナ禍>「あなたは一人ではない」 ー長崎いのちの電話ー 孤独・孤立に寄り添う

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 コロナ禍で深刻化する孤独・孤立。「話し相手がいない」「仕事が見つからない」。そうした切実な悩みや将来への不安に寄り添う人たちがいる。自殺予防を目的に、電話相談を受け付ける長崎市の社会福祉法人「長崎いのちの電話」(中根允文理事長)。20年以上相談ボランティアを務める雅子さん(72)=仮名=は「あなたは一人ではない」と、命をつなぐ電話を待っている。
 「はい、長崎いのちの電話です」。4月下旬、長崎市内の事務所。雅子さんが受話器の向こうから届く声に耳を澄ませる。同法人では登録ボランティア82人が交代で365日、午前9時から午後10時まで相談を受け付け、第1、3土曜は24時間で対応している。
 雅子さんが相談員を始めた当時は「近所の人とトラブルになった」など具体的な悩みが多かった。だが近年は地域とのつながりの希薄化などを背景に誰にも相談できず、「生きるのがつらい」と漠然とした不安や悩みを口にする人が増えた印象という。
 「ロープを手にしている」など自殺をほのめかす切迫した電話を取ることもある。心掛けるのは「相手の気持ちを受け止める」こと。「話をお聞かせください」と寄り添うことが大事だという。

長崎いのちの電話では365日、雅子さんら相談ボランティアが交代で電話相談を受け付けている=長崎市内

 年間の相談件数は会員制交流サイト(SNS)の普及などで減少傾向にあり、昨年は前年比1400件減の9403件。コロナの影響も数字上は目立たないが、「きょう誰とも話をしなかった」といった言葉の端々に外出自粛などの影響が垣間見えるという。雅子さんは「これまで抱えてきた悩みや不安に、コロナによる苦しみが上乗せされた気がする」と感じている。
 一方で感染拡大は活動にも深刻な影を落とす。同法人では感染拡大防止の観点から昨年8月、県内や長崎市内の感染者数を指標に活動制限・停止に関する基準を設けた。感染者の急拡大で今年1月初めから約1カ月間、さらには4月末も電話相談の停止を余儀なくされた。雅子さんは「『これでいいのか』との葛藤はあるが、相談員が倒れては元も子もない」と複雑な心境を吐露する。
 感染状況を注視しながらではあるが電話相談は5月の連休中も休むことなく受け付ける。「気持ちが楽になりました」「もうしばらく頑張ってみます」。名前も顔も知らない相手だが言葉を交わすことで、心を通わすことができたと思えることがある。雅子さんがやりがいを感じる瞬間。「こういう時代だからこそ、声と声のやりとりに自分もどこか癒やされるんです」

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 「長崎いのちの電話」の電話相談窓口(電095.842.4343)。相談ボランティアも募集している。事務局(電095.843.4410、平日のみ)。

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