【高校野球】元阪神エース井川級の素材 プロのスカウトが惚れる掛川西左腕の決め球と潜在能力

掛川西の沢山優介【写真:間淳】

静岡大会で準決勝、掛川西と藤枝明誠の2校が東海大会への出場権を獲得

春季高校野球静岡県大会は3日に準決勝2試合が行われ、掛川西と藤枝明誠の2校が東海大会への出場権を手にした。甲子園常連の静岡高を破った掛川西のエース沢山優介(3年)は2番手で無失点の好投。バックネット裏で視察したプロ野球のスカウトからは「元阪神エースの井川級」と、素材の高さを評価された。

静岡高の高須大雅と掛川西の沢山優介。プロ注目の投手を擁するチーム同士の対戦とあって、草薙球場のバックネット裏には楽天や阪神、中日など、6球団のスカウトがそろった。その中の1人は、掛川西の左腕・沢山をこう評した。

「まだ投手の体つきではないし、技術的にも投手として走り始めた段階。完成度が高くない中で、ここまでの投球ができるのは申し分ない素材ということ。伸びしろが大きくて、どこまで成長するのか楽しみな投手。阪神のエースだった井川慶のようになれる素材」。

沢山は3点ビハインドの6回途中から、2番手でマウンドに上がった。打者11人に対して被安打2で無失点。4奪三振で無四球と、チームを逆転勝利に導く好投だった。

1日の準々決勝・磐田東戦も2番手で3回1/3を投げて、7者連続三振を奪うなど無失点に抑えた。県大会3試合は、いまだ無失点。計13回2/3で、わずか6安打しか許していない。さらに、23奪三振、1四死球と圧倒的な数字を残している。

沢山のストレートの最速は144キロ。身長185センチの長身から投げ下ろすストレートと同じ腕の振りから投じるチェンジアップが大きな武器だ。沢山を「井川級」と評価するスカウトは「腕が緩まないし、打者の手元で急に変化する。打者のタイミングを外したり、沈んでバットの芯を外したりする一般的なチェンジアップではなく、打者にとっては落ちる、消えるという感覚だろう。腕の振りにも低めへの制球力にもセンスを感じさせる。ストレートも、もっと速くなると思う」と語る。同じ左腕で、ストレートと決め球チェンジアップで投球を組み立てた元阪神のエース・井川慶氏を重ね合わせた理由を説いた。

プロ注目左腕投手・沢山のチェンジアップの魅力とは?

沢山は今冬、得意のチェンジアップに磨きをかけてきた。これまでウォーミングアップと位置づけ、ストレートしか投げていなかった30メートルのキャッチボールでも、チェンジアップを投げるようにした。「落とそう」、「抜こう」とすると腕が緩み、変化が小さくなるだけでなく、打者に変化球と見破られやすくなる。キャッチボールから強い腕の振りを体にしみ込ませることで「思い切り腕を振って投げる感覚が身について、打者の反応が変わった。チェンジアップで空振りを多く取れるようになった」と手応えを感じている。

チェンジアップはストレートと同じ軌道から打者の手元で変化する。ストレートの球速や質が上がれば、効果を最大限に引き出せる。「去年の秋から今年の冬にかけて、体が開かないように投球フォームを固めてきた。体も大きくして、周りからは下半身ががっちりしたと言われる」。沢山は下半身を中心としたトレーニングで体を鍛え、体重を昨秋の76キロから84キロまで増量。球速アップにつながっている。

沢山が投手を始めたのは、軟式野球をしていた中学時代。現在144キロまでスピードを伸ばしてきたストレートは高校入学当時、120キロにも届かなかったという。掛川西の大石卓哉監督は「今までは長い手足に頼って、感覚だけでやってきた部分が大きかった。体の使い方や鍛え方を意識するようになって、投手らしくなってきた。持っている能力が高いのは間違いないので、まだまだこれからですね」と潜在能力に期待を寄せる。

成長過程でありながら、最速144キロのストレートと消えるようなチェンジアップを操る沢山。この先、どんな成長曲線を描いていくのだろうか。(間淳 / Jun Aida)

© 株式会社Creative2