完済予定は80歳!45歳で住宅ローンを組み貯蓄がゼロになったシングルマザー

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、看護師の女性。2人のお子さんを持つシングルマザーである相談者。今年1月に住宅を購入したら貯金がゼロになってしまい、「無謀だった」と反省されてます。今後、どのようなマネープランを立てるべきでしょうか? FPの氏家祥美氏がお答えします。

今年の1月に無理をして戸建てを購入してしまいました。家具を揃え、学資保険で600万積み立てている他は貯金がありません。100万程あった貯蓄は引っ越しや家具の購入、生活費で現在ゼロになってしまいました。無計画だった事を反省しています。シングルマザーで45歳という年齢で今後の家計管理についてアドバイスを頂きたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、45歳、看護師、シングルマザー

・同居家族について:中学生2人(15歳、13歳)、母71歳 無職

・住居の形態:持ち家(戸建て/埼玉県)

・毎月の世帯の手取り金額:35万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:110万円

・毎月の世帯の支出の目安:31万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万7,000円(住宅ローン)

・食費:5万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:3万5,000円

・保険料:6万3,000円

・通信費:1万円

・車両費:3万円

・お小遣い:5,000円

・その他:1万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:6万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:2,950万円(物件購入・借入額2,950万円、金利0.52%、35年ローン)


氏家:こんにちは。このたびはご相談いただきありがとうございます。今年の1月、45歳で戸建てを購入したら貯蓄が無くなってしまい、無計画だったと反省しているということですね。これから35年間返済が続く予定ですから、中学生のお子さんを2人抱えるシングルマザーとしては、目先の子どもたちの教育や、その後のご自身の老後など、とても不安なことでしょう。なんとか家計改善の道筋を立てていきましょう。

まずはリスク予備金を確保しましょう

ご相談者さんご自身も「反省している」と書いていらっしゃいますが、45歳で35年ローンを組んでいるということは、ローンの完済予定は80歳。完済までの道のりは長く、これから積極的に繰り上げ返済をしていく必要があります。現在の返済額は月額7万7,000円ということですが、これは金利が0.52%の超低金利だからこそ。おそらく変動金利だと思われますので、金利が上昇したら月々の返済額も増加していきます。

とはいえ、現在の家計には貯蓄がありません。家計としてはある程度のリスク予備資金を貯蓄として備えておかないと、体調を崩して働けなくなった場合など不測の事態にも対応できなくなってしまいます。そのため、当面はリスクに備えた貯蓄の確保を最優先して、繰上げ返済は後回しとするしかないでしょう。

毎月3万円の貯蓄と、ボーナスから70万円の貯蓄をあわせると年間で106万円を貯められます。2021~2023年の3年間この貯蓄を継続すると、リスク予備資金として318万円が用意でき、約10カ月分の生活費が確保できることになります。

中学生のお子さん2人の教育費

ご相談者さんには、15歳と13歳の中学生のお子さんがいます。子ども達の教育費は学資保険に加入済で住宅購入時にも手をつけずにおいたのはよかったですね。おかげで学資として将来600万円を用意できる見込みです。

お子さんの希望進路にもよりますが、仮に私立大学文系に進学した場合、4年間の学費は約550万円。2人分では1,100万円となります。600万円は確保済みなので、これからあと500万円(250万円×2人)を、お子さん達が大学に通う6年間で家計から補う必要があります。1カ月あたりに家計から出す金額は、500万円÷6年間÷12カ月=約7万円となります。

大きな金額に感じますが、現在、家計の中で大きな金額を占める保険料6万3,000円には2人分の学資保険の保険料が含まれているはず。お子さんが大学に入るタイミングでは学資保険の保険料の支払いは終わると思うので、その金額を大学資金の不足分に回すことができます。また、いま毎月かかっている教育費3万5,000円も大学の不足分に回せます。

これで私立文系4年間の授業料までは、何とか親として用意してあげる目途が立ちました。ここまでできれば親としての務めは十分です。もし、お子さんが学費の高い私立理系学部や芸術系への進学を希望する場合や、ひとり暮らしをしたいといった場合には、お子さん自身が奨学金を利用するなどして、自分の力でやってもらいましょう。

住宅ローンの繰上げ返済プラン

先ほど、「毎月3万円の貯蓄と、ボーナスから70万円の貯蓄をあわせると年間で106万円を貯められる」というお話をしました。2021~2023年はリスク予備資金を貯め、2024年は上のお子さんが高校3年生の年でもあるので、この年に2人分の受験費用を確保します。すると、繰上げ返済を始められるのは2025年からということになります。

2025~2030年までの6年間はお子さん2人が順番に大学に入学して卒業を迎える年となりますが、ここの6年間は学資保険の満期金と、学資保険の積立が終わって浮いたお金や塾代の支払いが不要になって浮いたお金で大学の授業料をねん出します。そのため、年間106万円の貯蓄は教育費に充てないように注意して、代わりに繰上げ返済を始めます。

2031年からは2人目のお子さんも社会人となる予定ですから、教育費負担がなくなります。この時、ご相談者さんは55歳。勤務先にもよりますが、このあたりから昇給に期待が持てなくなる年齢に入ってきます。ご相談者さんの勤務先でももしかしたら収入が伸び悩んだり減少したりすることもあるかもしれません。ただし、この年から教育費負担がなくなるので家計に余裕が生まれる考え、このまま100万円ずつの繰上げ返済を59歳となる2035年まで続けましょう。

現在のお仕事は、65歳まで続けられそうでしょうか。看護師さんは体力的に大変なこともあるかと思いますが、マネープランから考えると65歳まではお仕事を続けて、返済を続けて欲しいです。ただし、60歳からは通常通りに返済をしていくだけでよく繰り上げ返済までは必要ありません。こうすると64歳で住宅ローンを完済できる見込みが立ちます。

現在80歳まで続く予定の住宅ローンですが、このような返済計画を実行すれば、65歳からの年金受給まで住宅ローンを引っ張ることなく、住宅ローンを完済できます。退職金などが受け取れる場合には、さらに老後に余裕が生まれるでしょう。

これから気をつけたいこと

ここまで住宅ローン返済を第一としたマネープランを解説してきましたが、暮らしには他にも想定しておきたい費用があります。一戸建ての場合は普段管理費や修繕積立金を支払っていない分、メンテナンス費用を考慮しておく必要があります。少なくとも、10年ごとに100万円程度の予算を取っておきましょう。また、お仕事を続けるために自家用車が必須であるならば、自動車の買い替え費用も想定しておく必要があります。このほかにも、お子さんの成人式や結婚式費用の援助など、かけようと思えばいくらでもお金は出ていきます。

今後気をつけて欲しいのは、大学の授業料以外はお子さんにお金をかけすぎず、社会人になったお子さんには生活費を入れてもらうなど協力を求めることです。お子さんに入れてもらった生活費の一部を将来の結婚援助資金として活用すれば、住宅ローン返済を続けながらお子さんのお金をお子さんのために活用できます。

それから、無理はしないこと。健康に気をつけて長く働き続けることが何よりもローン完済への近道です。65歳までに住宅ローンを完済できれば、老後の不安はずいぶんと解消できるでしょう。新しい家で家族と力を合わせて頑張ってください。

© 株式会社マネーフォワード