誕生・長崎ヴェルカ(中) 期待 まちづくりの一環に

ユニホームデザインの発表会見で抱負を語る伊藤拓摩監督(中央)=4月10日、長崎市の三菱重工総合体育館

 長崎初のプロバスケットボールクラブには、多方面から期待が寄せられている。
 まず外せないのはまちづくりの視点。ヴェルカを運営するジャパネットホールディングスは現在、長崎市幸町で再開発計画を進めている。「長崎スタジアムシティプロジェクト」と銘打たれたこの計画は、6万8700平方メートルに及ぶ一帯を一つの街と捉え、サッカー専用スタジアムとアリーナなどを建設する方針。2024年完成予定で、人口流出が顕著な長崎においてスポーツを切り口に人の流れや雇用を生み出そうという狙いがある。
 そこで、すでにJリーグクラブのV・ファーレン長崎を運営しているジャパネット社が目をつけたのがBリーグだった。Jリーグが2~12月に開催されるのに対して、Bリーグのシーズンは10~5月と“裏表”の関係。二つのプロスポーツが両輪となり、施設内を年中稼働させる青写真を描いている。ヴェルカが話題を集めるようなクラブに成長すれば、それだけ“シティ”内の動きは活発になり、地域も活気づくという仕組みだ。
 もう一つの意義は競技力の向上。長崎はジュニア層で毎年のように将来性豊かな選手が育っており、中学選抜チームが集う都道府県対抗ジュニア大会で17年に男女とも準優勝するなど実績を残している。だが、県外の有力校に進学するケースも少なくなく、高校では05年を最後に全国8強から遠ざかっている。
 地元に有力なプロクラブがあれば、子どもたちや指導者が本物のプレーを直接見る機会が増える。ヴェルカは下部組織も設立する予定で、ユース年代から育てた選手がトップチームで活躍するケースも考えられる。
 さらに強くなれば、現日本代表で29歳の田中大貴(A東京、雲仙市出身)、昨冬の全国高校選手権準Vの東山(京都)を率いた18歳の米須玲音(日大、松浦市出身)ら、トップ選手を呼び戻すための受け皿にもなる。長崎を再びバスケットの強豪にできる可能性をヴェルカは秘めている。
 県バスケットボール協会専務理事の太田京子(66)は相乗効果を口にする。「子どもたちの夢になるようなチームができるのはうれしい。一緒に盛り上げていきたい」

 


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