コロナ禍でも全国に笑いを。間寛平、芸能生活51周年を振り返るエピソードインタビュー!

今年芸能生活51周年を迎えた間寛平さん。5月30日からの熊本プレ公演を皮切りに全国10ヶ所で記念ツアーを行う。本当は昨年、50周年を機にお祝いをしたかったそうだが、周知の通り、コロナウィルスのおかげで全てリセット。と言うわけで、50にプラス1にして気分新たに寛平さん動き出します。

* * * * *

――今年で芸能生活51周年ということですが、振り返ってみていかがですか?

わからんうちに51年になったよう・・・。長いようで短く、短いようで長い、ただただ走り続けてきたという感じやね。でも、この前もふと、振り返ってみて面白いなぁって思ったことがあって・・・。

僕が吉本興業に入ってから今まで、その間に社長が6人変わってますねん。

一番最初に出会った社長は八田さんと言う方で、まだ僕が二十歳過ぎて入ったばっかりの頃です。いきなり社長から「こんな汚いやつを舞台に出すな!」って言われて・・・確かに小汚かったけど(笑)で、舞台でも失敗とかすると、その度に呼び出されては怒られてましたわ。あぁ社長って怒るんや、なんて怖い世界やと思ってました(笑)とはいえ、その後、24歳で吉本新喜劇の座長にならしてもろたんですけど、僕自身は、ギャグばっかりやってたから、初日の幕が開いてウケへんかったら、見にきていた社長から終演後、呼ばれますねん。それでまた怒られたり、「おい寛平!あそこは、こうしたらええんちゃうんか?」とか言うて一緒に考えてくれたりしてました。で、その社長が辞めて、次になりはった社長にもよく怒られました。

今やから言えるけど、40年以上前、当時はお酒飲んで車運転したりとかしてる人、普通に多かったんです。今やったら考えられへんけどね。で、僕も恥ずかしながら酒飲んで運転してて検問で捕まったことがあったんです。その時に迎えにきてくれたんがその時の社長で、「何しとんねんほんまに!とりあえずしばらく謹慎しとけ!けど、吉本興業の名前が新聞に載って名前広まったわ」って・・・そんな時代ですわ。

そんな常に怒られたりしてたんが、徐々に社長の代が変わってくると「寛平ちゃ〜ん」とかフレンドリーに、いわゆる年齢が近くなってきて、今では年下が社長になってます・・・。

僕自身のスタンスは全く変わってないんですけど、周りがいつの間にか社長になったり出世したり・・・そういうとこでもう51年も経ってるんやなって。さっきも言いましたが僕自身のスタンスは変わらないし、感覚的にはずっと若いまんまやねんけど、いざ現実的な数字を突きつけられると、あ!もう71歳なんや!って。今も(明石家)さんまちゃんをはじめ、よう怒られてんのに(笑)。

ーーそれだけ怒られた中で記憶に残っているエピソードってなんですか?

僕はね、入った当初、花紀京の付き人をやってたんですよ。岡八郎兄さんと並んで吉本新喜劇の黄金期を支えた人やね。その人に対して良かれと思ってやったことで、ババちびるほど怒られたことは覚えてますわ。

付き人としての当初、あまり言葉遣いを知らなくて、大きな劇場で公演があった時に、舞台袖に花紀兄さんをはじめ、茶川一郎さん、芦屋雁之助先生ていう大御所の喜劇役者さんたちが話してて、ちょうど花紀兄さんが『てなもんや一本槍』っていう人気番組に出るので台本を座長部屋に置いてたんですよ。それをチェックしてたんです。で、入りの時間を確認せなあかんと思って、ツカツカって話してる輪に行って「今日、てなもんや行くの?何時にてなもんや行くの?」って確認する感じで言うてたわけ。そしたら大御所さんらがギョッとして僕を見てる。そしたら花紀兄さんが「ちょっと来い」って言われて舞台裏連れて行かれて「お前、てなもんや行くの?って、俺はお前の友だちか?普通は、行くんですか?やろ!」て怒られて。それで「すんません、すんません」謝ってんけど、次の日「てなもんや今日も行くの?」って言うてしもて、また舞台裏に連れて行かれてボカーンどつかれて・・・。まぁそんな口の聞き方したらあかんわな(笑)。

それから付き人としては花紀京兄さんが入る1〜2時間前に待機しとかなあかんから楽屋で待ってた時に、髪洗ってないことに気がついたから楽屋受付のおばちゃんに頼んで炊事場みたいなところで頭洗わせてもらってから花紀兄さんの楽屋、大きな鏡やからそこに座ってドライヤーで乾かしてたら後ろに気配感じたからパッと見たら立ってて・・・後は、分かるわな(笑)。

後、同じく楽屋で待機してた時に、友人の舞台作家が「靴墨を貸してくれへんか」って言うてきたから花紀京兄さんで使うやつを貸したんですよ。で、彼が階段を降りるタイミングで花紀兄さんが上がってきて、すれ違いざまにその靴墨を見たらしく、挨拶して服を直している時に、「ちょっと頼みたいんやけど靴磨いてくれ」と。「え!?」「え!?やないがな、靴を磨いてくれへんかって言うてるねん」って。もう観念して、「すんません、貸しました」って言うたら「靴墨は、お前のんか?お前が買うたやつか?」って・・・後は・・・また分かるね(笑)。

とにかくそういう常識知らないとか、タイミング悪いとか、いらんことしてしまうとかで失敗が多かったですね。とはいえ、花紀兄さんは当時33歳、僕が21歳。よく面倒見てくれたと思います。厳しかったけど優しかった。「こいつはしゃあないやっちゃな」って言いながらも、付き人して半年くらいやのに自分のやってた役を、当時の京都花月という劇場でやってみろってやらせてくれたりして、あれこれ勉強させてくれはりました。

ーー寛平さんのポリシーを教えてください。

絶対に人には迷惑や裏切り、偉そうにしないようにと自分ではずっと思ってる。でも正直、迷惑はかけてきたけどね(笑)。

毎日、家を出る時、太陽に向かって「今日もよろしくお願いします。それと間違った行動を起こしたら上から怒ってください」って言うて、行くようにしてる。結局、後ろめたいことをしてたら太陽もそうですけど上見て歩かれへん。そういうこと。マラソンとヨットで地球を一周したアースマラソンを走ってる時も毎日思ってたましたね。

後は、なんか常に偉そうにしてる人っておるやん、何があるんやろって思うほど、そう言うの見てて、いつも“?”が浮かんでて、そんな偉そうにしててもしゃあないやんて思うんでね。

ーー寛平さんは様々なギャグやキャラクターをお持ちしてたり扮したりしてらっしゃいますが、中でも“引きずり女”は強烈です。

あれは昔、実際にいたんですよ。大阪の難波の元町ってあたりに夜中に歩いてたんですよ。でもおっさんなんですけど(笑)。聞いてみたら邪魔くさがりで伸ばした髪の毛にヤカンや鍋とかくくって歩いてたんですよ。手に荷物持つの面倒臭い言うて。みんな嘘や!って言うんですけどホンマなんです。

そんな話をマネジャーにしてたら「もうこれは、寛平さんがやらなあかんキャラクターですよ」っていうことで女性に置き換えてやってみたらあんなキャラクターに。自分でも気に入ってて、最終的にはニューヨークのタイムズスクエアで世界中のいろんなもんを引きずって歩いて、“引きずり女”を終わりにしたいなぁと。雅でしょ(笑)。

ーー寛平さんは昔から音楽活動も盛んにされてます。『ひらけ!チューリップ』はコミックソングとして100万枚セールスされたり、忌野清志郎さんなどとのコラボや『FUJI ROCK FESTIVAL』に出たりとミュージシャンという面もあり、今回、久しぶりにCDをリリースされるんですね。

コロナでみんな落ち込んでるから、なんか元気になる曲を作りたいということで、赤犬というバンドのメンバーたちと一緒に。曲自体は昨年できてました。

タイトルは変化球で『8、9、10の歌』で・・・。後は、『青春グルリンコン』と『立ち上がれ!ガッツマン』っていう歌やねんけど、『ガッツマン』、実は本当のタイトルは「ボッキマン」なんです。

人生は常に勃起しときたいと。ま、いわゆるずっと立ちっぱなしの元気でありたいということなんですけどね。さすがに発売するときにこのタイトルはまずいって言われまして・・・(笑)。でも勃起するって健康のバロメーターですからね。

一昨年くらいにこの曲ができた時、ちょうど純烈のライブにゲストで呼ばれたんですけど『ボッキマン』を歌ったんです。彼らのファン、おばちゃんたちが多いじゃないですか、引かれるんちゃうかなとも思ったんですけど、「ボッキマン、ボッキマン」言うてえらい盛り上がってくれて回春曲でもあるし、『ひらけ!チューリップ』のアンサーソングでもあるかも・・・みんな、好きなのねぇ(笑)。

ーー「ボッキマン」でアナログで出して欲しいです!それに『OTSUGE2021』ってタイトルでただただ寛平さんのギャグが入っているという、サンプリングしがいのある内容で素晴らしいです。「ボッキマン」、コロナ収束してクラブイベントでも流れてみんなで盛り上がりたいです。そんな曲と改めて今年は芸人になって51周年ということでツアーをやられるということですが。

5月30日(日)の熊本公演から東京、宮城、愛知、愛媛、大阪とか周らせて貰います。新喜劇とゲストを迎えてのネタをたっぷり。みんなに助けてもらいながら・・・。ぜひ、コロナ禍で大変な時期は続いてますけど、僕らの舞台で、マスクの下で大いに笑ってもらって元気になってもらえたらと思います・・・お礼のプ〜。ピュッピュッピュ!

* * * * *

■ 間寛平芸能生活50周年+1記念ツアー/いくつになってもあまえんぼう
https://kanpei50th.yoshimoto.co.jp

■ 8、9、10の歌~BEAT THE CORONA(コロナに負けるな)~
初回生産限定オリジナルマスク付き2750円(税込)
通常盤 1650円(税込)

インタビュー・取材/仲谷暢之
撮影/田原由紀子
記事制作/newTOKYO

© 株式会社amateras