聖火リレー県内へ

 〈島原から長崎まで延々六八・三キロ。これだけの距離が、人波と日の丸できれめなく埋まることはもうあるまい。…まさに想像を絶する歓迎にわき返った〉〈若アユたちの足取りは、いよいよ力強く、永遠の平和を願う原爆被爆地“ながさき”へ…〉▲興奮と感動で記者の筆が躍っている。1964年東京五輪の聖火リレー、熊本県から引き継いだ聖火が長崎市を目指した県内2日目の様子を伝える同年9月15日付の本紙長崎市内版から▲五輪の自国開催が「国家的大事業」だった57年前の熱とは比較になるまい。それでも、新型コロナの流行がなければ、下り坂の天気予報にももう少しやきもきしていただろうか。東京五輪の聖火リレーがきょうとあすの2日間、県内を走る▲応援はネットのライブ中継でどうぞ、沿道での観覧はマスクを忘れず、密と大声に気をつけて-と大会組織委の呼び掛けがこの欄の真上の記事にある。コロナ感染の広がりで、長崎市内はルートから公道の一部がカットされた▲聖火リレーは年齢や運動能力と無関係に、誰もが参加を望むことができる五輪、入手困難なチケットがなくても体感できる五輪-のはずだった。それが今、拭えぬ重さを伴いながら列島を進む▲遠巻きに眺める火、画面越しの炎。私たちに何を語り掛けるだろう。(智)


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