大阪死者続出なのに『めざまし8』で谷原章介、3時のヒロイン福田麻貴らが「吉村知事はタイプ」「肌がきれい」話で盛り上がる異常

“吉村アゲ”の『めざまし8』(番組HPより)

医療崩壊に歯止めがきかない状況がつづいている大阪府。昨日6日には、吉村洋文知事が緊急事態宣言の延長を政府に要請したが、これは当然の判断であり、むしろあらためて前回の宣言時に前倒し解除を要請したことの判断の妥当性が問われるべきだろう。

だが、いまだに吉村知事はその判断の誤りを認めようとはしない。吉村知事は昨日も『かんさい情報ネットten.』(読売テレビ)に生出演していたのだが、そこで経済学者の朴一・大阪市立大学大学院教授から「緊急事態宣言の要請が遅かったのではないか」と問われると「いま、感染者が多いということでさまざまなご意見・ご批判というのはあると思います。それは僕が受けなければならない立場だというふうにも思います」と言いながら、こうつづけた。

「いま振り返ってみると、この陽性者・感染者っていうのが1000名で推移しているので、この時点でこれをしておくべきだったというのは、これはあると思います。ご意見として。ただ、緊急事態宣言とほぼ同じ内容の対応(まん延防止等重点措置)をして、そのなかで、僕は不十分だと判断したので緊急事態宣言の要請を、社会経済を大きく抑えてでもやらなくてはいけないと判断をして、いまに至っています」

重点措置や緊急事態宣言の要請をおこなったことを勝ち誇ったように取り上げて“適切な判断をしてきた”と誇示する発言だが、それは前倒し解除の要請によって感染者が急増して止むに止まれずやっただけの話ではないか。ようするに、「意見・批判を受け止める立場」などと言っておきながら、結局は自己弁護しかしていないのである。

入院率が約10%という凄惨な状況を招いておきながらバンバンとテレビ番組に出演し、口にするのは自己弁護──。もはや正気の沙汰ではないだろう。

しかし、正気の沙汰ではないのは、メディア側も同じ。というのも、吉村知事が登場せずとも、テレビではいまだに“吉村アゲ”が普通に起こっているからだ。

それは、5日放送の『めざまし8』(フジテレビ)でのこと。この日の番組ではインド由来の変異株を取り上げたのだが、そのなかで吉村知事の「私権制限をしてでも強制隔離すべきだ」というツイートを紹介した。

ここで司会の谷原章介は「みなさんを守るために働いている吉村さんのお気持ち、立場、すごくわかるんですけども、『私権制限してでも』ってかなり強い言葉、気になりますよね」と言い、コメンテーターの若狭勝弁護士に話を振ると、若狭弁護士は「知事としては言わざるを得ないところがあるんだろう」「立法、法律をつくるのが何よりなんですけど、国会がいま、ほとんど真剣にその点を議論するような状況ではないんじゃないか」などと発言。谷原は「政治家の強いリーダーシップ、これが必要ということですよね」と言い出し、若狭弁護士も「政治がどんどん後手になってきているから、結局こういうような状況に陥っていると言っても過言ではない」とまとめた。

●3時のヒロイン福田麻貴、河崎環、谷原章介、若狭勝まで「吉村さんはイケメン」「肌がきれい」

あ然とするようなやりとりだ。発言を撤回してしまったが、兵庫県明石市の泉房穂市長が「病床が確保できていないのに、私権制限はやってはいけない。政治家の責任放棄で、失格だ」と批判したように、吉村知事の「私権制限」発言は責任逃れのための責任転嫁でしかない。それを「みなさんを守るために働いている吉村さんのお気持ち、立場、すごくわかる」と前置きすることはもちろん、「政治家の強いリーダーシップが必要」などのとまるで私権制限が必要であるかのような話にまとめるって、やっていることは完全に吉村知事のアシストだ。

しかし、もっと酷かったのはこのあと。スタジオでは、呆れ果てて開いた口が塞がらなくなるようなトークがはじまったのだ。

まず、唐突に谷原が「なんか最近、吉村さんの顔がどんどんどんどん疲れていっている気がするんですけど」とコメンテーターの3時のヒロイン・福田麻貴に話題を振るのだが、すると福田はこんなことを言い出した。

「そうですね、さすがにまあ長期戦で疲れているとは思うんですけど。いまCM中に、河崎さんから『吉村さんどう思う?』って言われたんで、政治的なことかな?と思ったら、『タイプかどうか』(と訊かれた)」

ここでスタジオでは笑いが起こり、すかさず谷原はコメンテーターでコラムニストの河崎環に「(吉村知事が)タイプなんですか?」と質問。河崎は「いやいや、世間でイケメンって言って『吉村さん好き』って言う人もいれば、『なんかちょっと私、吉村さんはうーん』って言う人もいるので、『どう?』ってちょっと訊きました。すみません、しょうもない話して(笑)」とコメントしたのだった。

大阪では医療崩壊によって救えたはずの命が救われず、自宅で亡くなる人が多数出ている。そんななか、テレビでは「吉村さんはタイプか?」「イケメンか?」という弛緩しきった会話が垂れ流される──。絶句するしかない光景だが、しかし、このどうでもいい話題はその後もつづく。

谷原は性懲りもなく「福田さんは(吉村知事はタイプ)?」と質問し、福田が「タイプです!」と元気よく返事すると、スタジオでは「おっ!」と歓声。さらに谷原が「肌がきれいよね、吉村さん」と言い出すと、今度は若狭弁護士もトークに加わったのだ。

若狭「私もね、タイプなんですけど。彼が司法修習生のときに私は教官をやっていたんですよ。だから教え子みたいなもんで、ほんとナイスガイですよ」
谷原「どんな生徒だったんですか?」
若狭「本当にいまみたいにさわやかだし、いまのような感じがずっとつづいているような感じ」
谷原「真面目な。なるほど。全部背負いすぎているみたいな感じもするんですけどね。吉村さん、頑張ってください!」

このように、「イケメン」「肌がきれい」「ナイスガイ」「さわやか」ときて、最後は「全部背負いすぎている」「頑張ってください!」と吉村知事にエールを送って締めくくられたのだ。

●ワイドショーがこの状況でも「吉村アゲ」なのは、出演しまくる橋下徹への忖度も

一体どういう神経をしていたら、こんな会話、放送になるのだろう。「全部背負いすぎているみたいな感じ」と谷原は言ったが、それが市民の命を預かる首長の仕事であり責務だ。にもかかわらず、宣言の前倒し解除要請を筆頭に吉村知事はそれを放棄してきたのだ。

しかも、その吉村知事の無責任政策のツケは、いま府民が払わされている。現に入院もできず自宅療養を余儀なくされたり、入院先やホテル療養先が見つからず調整中になっている患者は合わせて約1万7000人にものぼっている。「全部背負いすぎている」のは吉村知事ではなく、府民であり医療従事者にほかならないのだ。なのに、責任を問うこともなく、あっけらかんと「吉村さん、頑張ってください!」って……。

つまり、吉村知事本人が出演して自己弁護・自己正当化せずとも、このようにメディア側が率先して吉村知事から政治責任を取り除き、「イケメンの頑張っている知事」に仕立ててくれる、というわけだ。

そして、このようにメディアが吉村知事を「勝手に漂白、浄化」する構造に深く影響を与えていると見られるのが、橋下徹氏の存在だ。

実際、この放送日には出演していなかったが、橋下氏は『めざまし8』の月曜と木曜の総合解説を務めている。本サイトで取り上げ、大きな反響が寄せられた「大阪コロナ重症センターは3月末で閉鎖する予定だった」と吉村知事が自己正当化するためにホラを吹いた(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2021/04/post-5848.html)のも同番組でのことで、その日は橋下氏も出演し、吉村知事をアシストしていた。

これは『めざまし8』にかぎった話ではない。橋下氏が不定期ゲストとしてしょっちゅう出演する『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)や『Mr.サンデー』(フジテレビ)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ)、『バイキングMORE』(フジテレビ)などでも同様だ。

ようするに、橋下氏が曜日レギュラーとして深くかかわっている番組であるために、自然と吉村知事のフォローがはじまる構造ができあがってしまっている。そういうことではないのか。

実際、橋下氏がテレビ局に与えている影響力は大きい。たとえば、橋下氏は新型コロナの初期から「PCR検査抑制論」を喧伝し、積極的な検査を訴えていた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)と玉川徹氏を名指しにして他局の番組で攻撃しつづけてきたが、テレ朝の上層部はABEMAで冠番組を持つ橋下氏の影響力の大きさから『モーニングショー』の報道内容を問題視し、現場では萎縮ムードが広がっていったともいわれている。

政界を引退した橋下氏が、吉村知事の後ろ盾としてメディア政治を展開する。メディアから引く手あまたの橋下氏のテレビでの存在感を考えれば、政界にいたときよりもその影響力は甚大になっているかもしれない。そうしたなかで、吉村知事の責任を追及する報道が抑えられ、それどころか現実を無視した無用な持ち上げが起こっているのではないのか。──そう考えれば、吉村知事だけではなく橋下氏の責任も重大だと言わざるを得ないのだ。
(編集部)

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