韓流ブームによってOST(オーエスティー)という言葉が定着してきた近年。ヒットする韓国ドラマには、名シーンが色鮮やかによみがえる劇中歌の存在が欠かせません。アジアを越え、今や世界中の人々を魅了する韓国ドラマOST。その世界に迫ってみます。
映画やドラマの中で使用される楽曲のことを「Original Sound Track(オリジナルサウンドトラック)」といいます。日本では省略して「サントラ」と呼ばれますが、韓国では頭文字をとって「OST(オーエスティー)」と呼びます。韓流ドラマの浸透によって、近年は日本でもOSTと表記されることが増えてきました。
韓国のOSTの特徴は、BGMとして使用されるインストゥルメンタルだけでなく、歌の入った劇中歌が多いことです。
日本の場合、オープニングとエンディング、挿入歌など多くても4曲ほどです。しかし韓国では、主要登場人物ごと、シーンごと、さらに話数が進むにつれて新曲が追加されるなど、ドラマ公式アルバムの大半を劇中歌が占めることも珍しくありません。
アイドルのミュージックビデオ(MV)でも、ストーリー性の高い大作があるように、韓国では音楽とともに映像も重要視されます。逆にドラマでは、登場人物の心情を表現しシーンを盛り上げるために、映像とリンクした楽曲が求められるのです。
そのため、専門の音楽監督が楽曲のプロデュースを担当し、OSTに参加するアーティストも事務所の枠を超え、有名無名を問わず幅広いアーティストが起用されます。
OSTアルバムがヒットチャートの上位を占めることもあり、「愛の不時着」や「梨泰院クラス」など、ヒットドラマのOSTは軒並み1位となっています。さらにはOSTの歌手に贈られるベストOST賞を設けている音楽大賞もあるほどです。
韓国ドラマにとって、OSTは演出の一部であり、時には作品の顔にもなる重要な存在なのです。
TEXT:菊池昌彦(フリーライター)
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)